がんと診断された時にどう行動しますか?




 2006年に母が大腸がん(ステージ3)と診断され、2008年(73歳)に亡くなりました。生前の電話では、1週間後には手術を受けること、そして手術で取り出したがん組織を使って「自家がんワクチン療法」を行うことを聞きました。今、改めて「自家がんワクチン療法」について調べてみると、当時出来立ての技術であったことが分かり、よく短期間にこの治療法にたどり着き、治療する決心をしたものだと感心します。その後、抗ガン剤治療(副作用が強くて短期間で中止)や温熱治療等も実施しましたが、2年という短期間のうちに亡くなったので、その効果に関しては述べませんが、単に手術を受けた場合に比べて、「自家がんワクチン」等により再発防止が出来ているという精神的な支えが、母にとっては生きる上で心強かったのではないかと思われます。一方で私は、「その他に出来ることはないか」との相談を受けたものの良い答えが思い浮かばず、製薬会社に勤めていながら何も提案できない自分の無力さを痛感したことを思い出します。

 がんと診断されれば、誰もが強いショックを受けることは間違いありません。とはいえ、がん種やどのステージであるかによって5年生存率に大きな差があるので、そのような情報を知った後には、ショックがより強くなる場合もあるし、逆に軽くなる場合もあると思われます。ちなみに、ステージが進行しないうちに がんを見つけるには、国が推奨するがん検診(下表参照)を推奨の間隔で受診することや、N-NOSEのような検査も(賛否はあるものの)役立つでしょう。 

 それでは本題の「がんと診断されたときにどう行動するか?」に関してです。ご自身が膀胱がんと診断された経験をお持ちの東京大学大学院医学系研究科 総合放射線腫瘍学講座 中川恵一 特任教授の著作が参考になります。

 本の内容を私なりに咀嚼して以下に記します。

がんであると診断を受けた後に、「早急に手術が必要なので、入院の予約を」といわれることが多いようですが、その場では決めないことが重要です。そのためには、避難訓練と同じく、「もしがんと診断されたら 」ということを日頃から意識しておくとよいでしょう。現在、男性の3人に2人が、そして女性の2人に1人が生涯で何らかのがんにかかるといわれていることからも、その備えは高い確率で役立つはずです。

がん種、組織型(がん細胞の形状や がん細胞が集まった組織の状態から がんを分類)、ステージ、及び推奨の治療法を医者に確認します ⇒ がん種、ステージ情報から5年生存率を調べます。そして、その がん種の治療に関する情報を集めましょう。

早急にセカンドオピニオンを受けます。どこの病院でどのような治療を受けるかで生死が決まるといっても過言ではないので躊躇わずに実行して下さい(実際には2割の患者しか受けていないそうです)。下記④とも関連しますが、放射線治療医のセカンドオピニオンを受けるのが良いでしょう(手術数でわかるいい病院2023[週刊朝日ムック]で病院が探せます)。

現代医学で信頼できる治療法として確立されているのは、三大治療といわれる「手術」、「化学療法(抗がん剤)」、及び「放射線治療」です。この中で、放射線治療は20年ほどの間に急速な進歩があり、がん種(頭頚部がん、食道がん、肺がん、前立腺がん、子宮頸がん)によっては、身体への負担の少ないにもかかわらず手術と同等の治療効果が得られています。なお、中川先生は「サプリメント等による代替療法や食事療法(肉食を控え、菜食中心にする等)はまったく効果がない」と断言されています。 

 これとはまったく反対の意見として、医学博士 安保徹先生、医学博士 福田稔先生の共著をご紹介します。

 この本にはDVDが付属されているので、先生ご自身が医院にて実施されている施術を自分でも実施することが可能です。手足の爪の生え際にある井穴(いけつ)と頭部から足底にある治療点(圧痛点)を探して磁気針(下記)で刺激し、自律神経の乱れを改善し白血球のバランスを整えて免疫力を高めて、がんを含めた病気の治癒を促す療法です。定期的に血液検査を行って、白血球分画(具体的にはリンパ球数、及び顆粒球とリンパ球の比率)を調べながら治療を続けることが推奨されており、「これらの数値から治療の状態を確認できる」という点が私的にこの療法を信頼している点です。ちなみに、がんを治すには1800~2000/mm3 以上のリンパ球が必要で、1800/mm3 前後を維持できると共存が可能で、1800/mm3 以下であっても顆粒球とリンパ球の比率が良いケース(35%~41%)では共存が可能ということです。また、福田先生は患者から三大療法に関して相談されることがよくあるそうで、臨床経験上からリンパ球数が1200/mm3 台以下であれば三大療法は免疫を落としてしまうので勧めないとのことです。

 「がんと診断された時にどう行動するか?」に関しては、中川先生が推奨する前半部の記載をご覧下さい。そして、がんになるのを防ぐために(もちろん、がんと分かった以降も)、福田先生が推奨する「自律神経免疫治療」(後半部に記載)を続け、定期的に血液検査を実施して、白血球分画の数値を最適値に維持することをお勧めします。なお、がんを早期に発見できるように、国が推奨するがん検診を定期的に受診することが大切なことは言うまでもありません。

 上記を執筆後に、遅ればせながら「がん放置療法」で知られる医師 近藤誠先生(2022年逝去)の著作をkindle unlimitedにより無料で読める本を中心に数冊読みました。「三大療法は受けるな」、「そもそも検診を受けてがんを発見するな」という一見、過激な主張をする医師であることは知っておりましたが、きちんと著作を読むのはこれが初めてでした。タイトルが過激なこととタイトルから内容を勝手に推測出来たような気になっていたことが読んでいなかった原因です。本の内容には著作間での重複が多いので、とりあえず(内容が分かり易い)以下の一冊読めば良いと思います。

 この本を読むと本ブログのタイトルとした「がんと診断された時にどう行動するか?」ではなく、「そもそも検診を受けてがんを発見するな」ということこそ、重要なのではないかと思わされます。近藤先生の提唱は「近藤教」と揶揄されるほど、がん患者に影響力がある(洗脳する)と言われているので、以下の反する内容の本も読んでみました。

・近藤誠氏の『がんもどき理論』の誤り―病理医の見たがんの真実(斎藤 建、1996年)
・「抗がん剤は効かない」の罪 (勝俣 範之、2014年)
・医療否定本の嘘(勝俣 範之、2015年)
・近藤理論に嵌まった日本人へ 医者の言い分(村田幸生、2015年)
・長尾先生、「近藤誠理論」のどこが間違っているのですか?(長尾 和宏、2015年)
・がんとの賢い闘い方 「近藤誠理論」徹底批判 (大場 大 、2015年)

 すると、どちらの言い分も正しいように思えてきます。私は専門家ではありませんので、あくまでもこれらの本を読んだ印象からお話します。近藤先生に反対する立場の先生方の多くは、これまでの知識や経験から、「適切な三大治療」は、「がん放置療法」に勝ると考えており、患者のためになると信じています。一方、近藤先生は物言いは挑発的ではありますが、患者がアクセスしてしまう可能性が高い「不適切な三大療法(不勉強な医者による治療、経営を優先した治療、練習としての手術など)」に近づくなと警告していると思われました。これらを読んで、私が考える効果的ながん治療法の順序を纏めてみました。

 
 つまり、三大療法には「適切な三大療法」と「不適切な三大療法」が存在し、ここを明確にしないで議論をしていることが水掛け論の原因ではないかと考えます。「適切な三大療法」と「不適切な三大療法」がどのような比率で存在するのかは分かりませんが、警鐘を鳴らしても「不適切な三大療法」が非常に多い状況が一向に改善されないことが、近藤先生の主張がどんどんと過激に変容した原因ではないでしょうか。
 
 生涯で男性の3人に2人、また女性の2人に1人ががんになることからも、自分事として早めに対策を考えておくことが大事と考えます。なにしろ、「がんと診断された時にどう行動するか?」以前に、「がん検診を受診するか否か」が問われているのですから。今回、いろいろな本を読みましたが、自分の住んでいる地域で「適切な三大治療」に確実にアクセスする方法は結局わかりませんでした。となると、自ずと「がん放置療法」が次善の策となります。したがって、ブログ(他の投稿)でも紹介したからには自分でも試そうと思っていた尿1滴のがん検査(N-NOSE)を実施するのをやめることにしました。また、毎年受診してきた「がん検診」ではありますが、今後受診するのは控えようかと思っています。

    

 その後、近藤誠先生とほぼ同じことを提唱されている本があることに気が付きました。


 この本は新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦先生の著作で、「がん検診」を受診しない理由として以下9つが挙げられています。

・がん検診をいくら受けても余命はのびない
・がん検診を推進している人たちの言い分は怪しい
・がん検診に関する世論は操作されている
・レントゲン検査でがんになる
・がん検診で総死亡が増えている
・がんの運命は最初から決まっている
・人間ドック、健康診断の深刻すぎる問題点
・抗がん剤にまつわる怪しい話の数々
・がんは自分の努力で予防できる

 この本は上述の近藤理論批判本が出版された直後(2016年)に出版されましたが、近藤先生の援護射撃という立場ではなく(お二人に接点はなさそうです)、15年間温めてきた考えを纏められたそうです。それにしても、両者の主張されている内容が非常によく似ていることに驚きます。近藤先生のように他の医者を敵に回して扇動するような語り口ではなく、また根拠となる参考文献も多く掲載されており信頼がおける点から、最初に読むのならこの本がお勧めだと感じました。