ミトコンドリアの増強が期待できるサプリメント:5-ALA、NMN、ナイアシン、シスチン、CoQ10


 

 前回の投稿『「ミトコンドリア量測定(エナジーチェック)」による加齢度測定で予告したように、「ミトコンドリア量がやや少ない」との結果を受けてミトコンドリア増強を図るというのが今回のテーマです。

ミトコンドリアとは

 ミトコンドリアは身体を作っているそれぞれの細胞の中に数百から数千個 存在する小さな粒状の小器官でエネルギーを生成する役割を担っており、細胞の呼吸や代謝をサポートしています。また余り話題になりませんが、ミトコンドリアは体重の1割近くをも占めるともいわれています。

 そして ここからが重要ですが、ミトコンドリアは加齢とともに減少しますが、減少する一方ではなく細胞のエネルギー需要に応じて数や容積が増減することが知られており、「断食」や「有酸素運動」によりそうしたことが起こることが知られています(論文

 ミトコンドリアが他の小器官と大きく異なる特徴は、もともとは別の生き物だった可能性が高いことです。好気性細菌という酸素を使ってたくさんのエネルギーをつくりだすことができる生き物が、細胞内に住み着いてミトコンドリアになったと考えられています(細胞内共生説)。それゆえに、ミトコンドリアのDNAは核のDNAとは違った細菌のDNAに似た特徴を持ちます。さらに、細胞分裂(核が分裂する)とは異なり、細胞が必要だと判断したときには 分裂して増殖することができ(半自律的な増殖)、これも元の細胞とは別の生き物であったからこその特徴と考えられています。

ミトコンドリアの重要性を早くから説いていた安保 徹医師

 下記の本(2008年出版)は、検索した限りではミトコンドリアの健康への重要性を指摘する(サブ)タイトルをつけた日本で最初の本だと思われます。この本を読んではおりませんが、投稿「がん と診断された時にどう行動しますか?」で紹介した安保 徹医師の「ガンと生きる4つの法則(2011年出版)」という本に、「ミトコンドリアに呼吸させる」という項目があり、これを読んだ当時は ピンとこなかったのですが、ミトコンドリアの健康が全体的な身体の健康や病気の予防に重要であることを説いていたのだと、今になってようやく分かり感慨深い思いです。


ミトコンドリアを増強するサプリメント: NMN、5-ALA、ナイアシン、シスチン、CoQ10

 ミトコンドリアは、細胞にストレスがかかってより多くのエネルギーが必要になったときに新生され、質も向上します。したがって、「有酸素運動」や「断食」などが有効であることが良く知られています。また、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)、5-ALA(5-アミノレブリン酸)、ナイアシンシスチンCoQ10などのサプリメントも有効と考えられています。

 ここでは、ミトコンドリア増強(数や質の向上)に対して効果が期待されるサプリメントを ご紹介したいと思います。
 

① NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)

 NMNは4年くらい前にホリエモンがサプリとして摂っていることを公言した頃から、紹介する動画も増えたように思われます。長寿遺伝子サーチュインとNMNの関係性を世界で初めて発見したワシントン大学の今井 眞一郎 教授の影響も大きいでしょう。NMNはNAD+を生成し、そのNAD+はミトコンドリアのエネルギー代謝に不可欠です。

 当初、NMNの課題はその価格でした。ひと月に十万円以上は当たり前で、とても庶民が買える値段ではありませんでした。一方、現在の価格はひと月に2000円以下のものもあって、一見 身近になったかに思われます。私は最近 「日本製」、「高純度」、「GMP製造」を謳う安価なNMNを購入しましたが、いろいろな情報を集めるうちに怖くなり、2、3回飲んで止めてしまいました。決定的な情報は、 「朝日新聞は 楽天とアマゾンで売れ筋のNMNサプリについてラベルの表示どおりにNMNが配合されているかどうかを調べたところ 7商品のうち2商品にはNMNが検出されなかった」という記事(2023年)です。

 このように 製品は玉石混交です。中国などで生産された原料(酵母で生産)を国内工場で加工して「日本製」と謳う製品が多く、原料からすべて日本で生産された「純国産」の製品は私が調べた限り2社だけでした。このような中では、メーカーが「品質」を担保している製品が信頼できるといえるでしょう。調べたところ、メーカーが「品質」を担保しているものとして下記の製品が挙げられますが、値段には驚くほどの差があります。そういった点からも、まだまだ よく分からない部分(闇?)があり、価格もさることながら非常に手を出しにくいと感じ、私はお勧めいたしません。

既知のメーカーが販売する製品明治製薬:49,000~203,000円/月、日清ファルマ:80,784円/月、大正製薬:27,356円/月、山田養蜂場:4536円、山本漢方:3430円/月)
先に紹介した今井 眞一郎 教授が推薦(実験でも利用)する製品ミライラボ:118,800~324,000円/月)
情報公開が確かで純国産の製品NOMON[帝人グループ]:62,600円/月、三菱商事ライフサイエンス株式会社:30,000円/月)

② 5-ALA(5-アミノレブリン酸)

 5-ALAは培養細胞を用いた実験で新型コロナウイルス感染抑制効果があることを長崎大学の北 潔 教授が2021年に報告したことで注目を浴びました。5-ALAのアンチエイジング効果を紹介する動画は2年くらい前から急に増え、NMNよりも最近になって知られるようになった物質かと思っておりましたが、もともとは1950年代にアメリカで発見されたアミノ酸の一種です。その後 注目されませんでしたが、1988年に田中 徹博士(ネオファーマジャパン株式会社)が研究して効能が広まり、光合成細菌を利用した大量生産にも成功しました(ウーマンジャパンHPより)。

 5-ALAはアミノ酸の一種で、ミトコンドリア内でのATP生成に直接関与しエネルギー代謝を向上させる効果があります。「MCTオイル」のときに感じた「化学合成の響き」が「5-ALA」にもあって、この用語を聞いた時の第一印象は非常に悪いものでした。ところが、先述したように 5-ALAは1950年代にアメリカで発見されたアミノ酸の一種であり、決して危険なものではありません。また、コロナ後遺症1 や 慢性疲労症候群2における疲労感の軽減にも効果のある結果(論文12)が報告されています。
 
 そしてサプリメントとして購入する際に、先述したネオファーマジャパン(株)が製造した製品を比較的安価(1700円/月)に購入することが出来る点で非常に安心でき、私も摂り始めました。


③ ナイアシン(ビタミンB3)

 ナイアシンは補酵素NAD、NADPの構成成分であり、エネルギー(ATP)生成の60~70%に関与しているとも言われます。市販サプリメントを選ぶ際には「ナイアシン」と「ナイアシンアミド」の2種があることに注意が必要です。ナイアシンの高用量摂取はナイアシンフラッシュと呼ばれる皮膚の赤みや痒みを引き起こす可能性が高く、また高用量の長期摂取は肝臓への負担や胃腸障害を引き起こす可能性が指摘されています。ナイアシンフラッシュは血行促進効果としてナイアシン効果の指標とする方もいるようですが、重篤となる可能性もあるのでナイアシンフラッシュは無いに越したことはありません。

 ナイアシンの成人における推奨摂取量(日本人の食事摂取基準)は成人の場合 12~15 mgであり、通常のバランスの取れた食事をしている限り、日本人にとって不足しやすいビタミンではありません。一方で「ナイアシンフラッシュは血行促進効果としてナイアシン効果の指標とする方もいる」と先述したように体感し易いこともあり、筋トレ愛好家に「トレーニング中の持久力が向上し、疲労回復が早まるビタミン」として愛用されています。

 ミトコンドリア増強の観点からサプリメントとして摂る場合、調べた中では以下の製品が安全性と価格の(150円/月)観点から一番優れていると思われ、私も摂り始めました。


④ シスチン(or L-システイン)

 シスチン(摂取後にアミノ酸のL-システインとなる)はエネルギー代謝に関与しており、ミトコンドリアのATP生成をサポートします。また、グルタチオンという強力な抗酸化物質の前駆体として作用し、ミトコンドリア内で発生する酸化ストレスを軽減します。シスチンの摂取(7日間)が持久運動における疲労軽減に役立つことが2022年に報告されています。この報告によると、シスチンはミトコンドリアをストレスから守るグルタチオンという物質を作り、ミトコンドリアで作り出されるATPの量が減ってしまうのを防ぐ効果があるということです。

味の素(株)HP



 安心して摂ることができるサプリメントとして、味の素の「アミノバイタル」が最有力候補に挙げられますが、ここでは一般には気づかれにくい製品でありながら安心して摂ることが出来る製品(しかも比較的安価:2000円/月)をご紹介します。「ハイチオール」という名前をご存じの方も多いと思いますが、この製品は L-システイン、ビタミンCが主成分であることをご存じの方は少ないでしょう。医薬品として発売後に大衆薬としても発売(1972年)されました。シスチンはアミノ酸のL-システインが2つ結合した2量体で、シスチンを摂取すると還元されて2分子のL-システインになります。したがって、L-システインを摂取しても最終的に得られる効果は同じです。ちなみに先の論文中でのシスチン摂取量は1日当たり(230 mg x 3回)なので、下記の製品の1日摂取量(240 mg/6錠)は少なめではありますが、サプリメント(補助)という観点からすれば十分と思われ、私も摂り始めました。



CoQ10(コエンザイムQ10)

 加齢やその関連疾患に対してCoQ10が抗酸化剤として働くという報告は多数ある一方で、CoQ10がミトコンドリア機能に直接作用(電子伝達系において電子の授受を助け、ATPの合成を効率化)することで抗老化作用を発揮するという報告は余りありません。その最大の原因として、CoQ10がその強い疎水性のために水溶液中で凝集してしまうために、経口摂取した後に小腸から吸収されて 血液脳関門を越えてミトコンドリア内膜に到達することが困難である可能性が示唆されています。そのような中で、水溶化CoQ10が脳ミトコンドリア機能や運動障害を改善するとのヒトの疾患に対しての治療報告も見られるようになりました。これにより、臨床応用の可能性がさらに広がっています。これらの報告から、加齢に伴うミトコンドリア機能低下の抑制や神経変性疾患を含むミトコンドリア関連疾患に対する水溶化CoQ10による治療効果の可能性が示唆されています。

 以上をまとめると、通常の疎水性CoQ10ではなく、水溶化CoQ10であれば抗酸化剤としてのみならず、ミトコンドリアに直接働きかける効果も期待出来るということです(以上 論文参照)。

 CoQ10は1999年に心不全などの治療に使用される医薬品として承認されました。2001年に厚生労働省からサプリメント(食品)としての使用も認められました。20年以上販売されているので安全ともいえるし、医薬品にもなるくらいなので副作用の危険も孕んでいるといえます。

 私は以下の製品を摂り始めました。この製品は「包接体」であることを売りにしています。CoQ10製品には酸化型、還元型もありますが、先述のように「強い疎水性のために水溶液中で凝集してしまう」という弱点があります。本製品は この欠点を解消するためにナノサイズまで小さくしたCoQ10を環状オリゴ糖で包み「包接体」とすることで吸収力・持続力をアップしたもの(水溶化CoQ10の一種)です。


まとめ

 ミトコンドリアがエネルギー産生に関わる非常に重要な細胞小器官であることは中学校で習うので皆知っていますが、体重の1割近くをも占めるということは習った記憶がありません。そうと知っていれば、もっとミトコンドリアを意識して生活をしてこれたと思うと非常に残念です。その数や質を維持したり、向上するには「有酸素運動」が基本となりますが、「断食」に効果があることは注目すべき点です。

 前回の投稿『「ミトコンドリア量測定(エナジーチェック)」による加齢度測定』で予告したように、「ミトコンドリア量がやや少ない」との結果を受けて、サプリメントによりミトコンドリア増強を図る観点からNMN以外の製品を摂り始めました(有酸素運動としての週1回の登山は変更なし)。6か月後に再度測定するつもりですが、どのような結果となるのか非常に興味深いところです。