世界睡眠調査からわかること

 PHILIPSが毎年実施している世界睡眠調査(2021年)の結果(世界13カ国、1万3000人の成人が対象)において、日本は睡眠に満足している人の割合が13カ国中、最下位の29%でした。


 「やっぱり日本が最下位なのか」とこの結果に納得している方も多いかもしれません。ここに、全研本社株式会社が2015年にビジネスパーソンを対象に実施した平均睡眠時間の調査があります。これら二つの調査を直接結びつけるデータはないので定かではありませんが、「睡眠に満足している人(29%)とは、7時間以上睡眠をとっている人(21% + 4%)だろう」と考えて間違いはないでしょう。



睡眠負債とは

 2017年に放送されたNHKスペシャル「睡眠負債が危ない」の影響もあり、その年の「新語・流行語大賞」において、「睡眠負債」という用語がトップ10入りを果たしました。「6時間睡眠を2週間続けると、1晩徹夜をしたのと同程度に認知機能のパフォーマンスが低下する」という内容に非常に驚いたことを覚えています。しかも質が悪いことに、6時間睡眠を2週間続けても徹夜した場合のようにはパフォーマンスの低下を自覚できないといった特徴があります。ビジネスマンにとって6時間睡眠は十分とは言えないけれど6時間の睡眠を確保出来れば大丈夫だろうと思っていた私は(きっと多くの人もそう思っていたはず・・・)、この報告を知ってからは睡眠時間を増やすことに努めました。

睡眠と免疫(新型コロナ対策)

 6時間未満の睡眠で4.2倍も風邪を引きやすくなるという米国からの報告があります。このように、「睡眠負債」が溜まると免疫機能が低下します。また、インフルエンザのワクチン注射を打っても睡眠不足の人は抗体が出来にくい報告されています。十分な睡眠が新型コロナ対策として有効なことは間違いないでしょう。

睡眠負債解消のために

 「睡眠負債」という概念は2003年にペンシルバニア大学から発表され、2017年になって日本でもようやく広く知れ渡るようになりました。しかし、これだけ話題となり睡眠の研究が進んだにもかかわらず、睡眠負債を解消する魔法のような方法は今だ存在しません。毎日6時間以上睡眠をとるか、6時間しか睡眠を取れないならば睡眠の質を上げるしか打つ手はないのです。具体的な解消法は以下の本を読んでいただければと思いますが、「現代においても解消法はこんな手しかないのか」と(その既視感に)驚きます。

道具を手に入れよう

 睡眠負債の解消法は旧態依然としたものですが、解消法の効果を知る方法(睡眠測定アプリやスマートウォッチ)は、昔(といっても5年前)に比べて格段に進歩しました。「なーんだ、もう使っているよ」という方は読み飛ばして下さい。例えば、「睡眠の最初の90分(黄金の90分)をいかに深く眠るか」といった課題に対して、運動、昼寝、コーヒー、夕食、お風呂などの要因がどのように影響するかを自らの体を使って実験するのは非常に面白いと思いませんか?下記のアプリはAndroid/iphone対応で無料でも十分に楽しめますが、年間3200円を払えばさらなる機能を満喫できます。睡眠測定が可能な様々なアプリがありますが、枕の下に置くのが電磁波にさらされる感じがしていやだったので、頭から50 cm程度離しておいても計測可能な本アプリ(呼吸で計測)をずっと使っています。

 

Sleep Cycle AB
Sleep Cycle ABの解析結果例
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Sleep Cycle ABの解析結果例
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 安価なスマートウォッチもいつの間にか十分に実用的になりました。睡眠測定のためであれば、以下のような製品でも十分に事足ります。睡眠測定以外にも心拍数測定(常時)や血中酸素測定(常時)などの機能もあり、便利できっと手放せなくなるでしょう。以下に睡眠測定アプリで測定した同じ日にスマートウォッチで測定した結果を載せます。得られる情報は同等ですが、「睡眠の質」の点数の根拠が、このスマートウォッチの方が分かりやすいと思います。このあたりは、アプリやスマートウォッチの種類によって様々と思われるので、参考程度として頂きたく。

HUWAEI BAND 7
Amazon

HUWAEI BAND 7の解析結果例(1ページ)

HUWAEI BAND 7の解析結果例(2ページ)

効果はいかに

 まず自分の睡眠がどういう状況にあるかを知ることが、良い睡眠を実現するための始まりです。睡眠測定アプリやスマートウォッチがこんなに安価に入手できるのに使わない手はありません。睡眠は個人差が大きいので、万人に共通する良い方策はないでしょう。是非、自分の体に目を向けて実験(ゲーム)するような気持ちで点数を上げてみて下さい

 ちなみに、私は「睡眠の質(点数)」を上げただけでなく、「睡眠に満足していない状態から、睡眠に満足している状態へと改善(あくまで自分の判断ですが)」することが出来ました。具体的には「6時間睡眠では足りない」と強く認識することで、毎日の睡眠時間を少しでも増やせたことが、睡眠満足度を改善出来た一番の原因だと考えます(点数のみであれば、睡眠時間を増やせばある程度まであがります)。「睡眠の質」が新型コロナ対策(予防、感染後の回復)に有効と信じてお互い頑張ろうではありませんか。

まとめ(コスト計算を含む)

 睡眠負債が溜まると免疫機能が低下します。具体的には、6時間未満の睡眠で4.2倍も風邪を引きやすくなるという米国からの報告があります。したがって、睡眠の改善が新型コロナ対策として有効なことは間違いありません。

 そこで、まずは睡眠測定アプリを無料で利用してみましょう。また、十分な睡眠測定機能をもつスマートウォッチもその機能を考えれば驚くほど安価に入手できるので有効です。7100円で購入し1年間使用した場合、1日当たり約20円です。これなら金額を理由に使用をためらうことはないでしょう。一人でも多くの方が「睡眠の質」を上げて、「睡眠に満足している状態」を実現できることを願います。