インフルエンザおよび風邪対策のサプリメント



 「冬に風邪が流行するのは、低温による鼻中の免疫低下が原因」とする論文があります。驚くことに この当たり前と思われることが発表されたのは約2年前と つい最近のことです。「風邪に効く薬を発明出来ればノーベル賞」という話は聞いたことがあるかと思いますが、今もって風邪に関して未解明なことが多いことが良く分かります。

 冬から春・初夏へと季節は移りましたが、寒暖差が大きいこともあり しばらくは風邪を引きやすい季節が続きます。ところで、寒暖差が大きいと なぜ風邪を引きやすくなるのでしょうか?これに関しても、即答できる明確な共通認識はないと思われます。

 本ブログでは投稿「意外と知らない冬に(寒いと)風邪をひく理由」において冬の風邪対策を既にお伝えしましたが、今回は一年中 有効な風邪対策を最新の情報も交えてお伝えできればと思います。

サプリメント

 バランスの良い食事、適度な運動、十分な休養、ストレス管理などの生活習慣で体調を整えることが風邪対策に有効であることは分かりますが、サプリメントがインフルエンザや風邪に対してどれほど有効なのかは見過ごされがちなので改めて纏めてみたいと思います。

ビタミンC
 私が若い頃は、ビタミンCは風邪の予防および症状軽減に効くとされていましたが、「ビタミンCの大量摂取は風邪の予防には無意味である」という論文が2020年に発表されています。これに関しては最近では広く知られるようになっていますが、一方で罹ってしまった際の症状軽減は確かなようで「ビタミンCは(鼻水程度の軽度の風邪ではなく)重度の風邪の期間を短縮する」ことが2023年に報告されています。
 
ビタミンD
 このブログでは、ビタミンDをCOVID-19対策として最も有効なサプリメントとして挙げており(投稿「ビタミンD」)、風邪対策としても一番有効なサプリメントと考えます。なお、風邪の予防だけでなく、罹った際の重症化を抑える観点から ビタミンDの連日摂取で 乳幼児や高齢者が命を落とすこともある急性気道感染症の発症を16%低下させることが2025年に報告されました。

 なお、この研究をした浦島充佳 教授(東京慈恵会医科大学)は、小中学生 334人を対象とし、ビタミンDサプリメント(1200 IU/日)を摂取する群とプラセボを摂取する群に1:1の割合でランダムに振り分け二重盲検ランダム化プラセボ比較試験を実施し、ビタミンDの摂取により インフルエンザA(医学的に風邪とは異なる)の発症リスクが42%低下したことを2009年に報告しています。

・ビタミンD群: インフルエンザAの発症者 18人 / 167人(10.8%)
・プラセボ群: インフルエンザAの発症者 31人 / 167人(18.6%)

亜鉛
 計28件の研究を統合的に分析したメタアナリシス研究により、「亜鉛を摂取することでインフルエンザや風邪などのウイルス性呼吸器感染症が予防される上に感染期間も短縮される可能性がある」と2021年に報告されました。一方、計34件の研究を統合的に分析したメタアナリシス研究では、「亜鉛摂取は感染期間短縮の可能性はあるが、風邪の予防にはほとんど あるいは全く効果がない可能性がある」と2024年に報告されているように、風邪に対する亜鉛の効果はまだ確定していません。 

 このように風邪予防に関しては不確実ですが、感染期間を短縮(約2日)する効果は期待できるということは間違いなさそうです。上記報告で取り上げられた研究はいずれもが 亜鉛不足でない被検者を対象としているので、そもそも亜鉛不足であることは論外なのですが、亜鉛が十分であっても風邪に罹患した際に「亜鉛トローチ」などが有効です。

 風邪の治療における「亜鉛トローチ」への関心は、白血病を患う3歳の女児が亜鉛錠剤を丸ごと飲み込まずに口の中でゆっくり溶かすと、風邪の症状が数時間以内に消えたという偶然の観察から始まりました(1984年論文)。この利点は錠剤を溶かす(飲み込むのではなく)ことから得られるようで、呼吸器系にある小さな毛のような構造(繊毛)の機能を向上して粘液の除去を助けるだけでなく、気道上皮バリアを強化することで病原体から身体を守ると考えられます。ポイントは、風邪の症状が出てから24時間以内に亜鉛サプリを摂取する
ことです。ただし、亜鉛には「味覚の変化、嗅覚の喪失、吐き気」などの副作用があるので摂取用量には十分にご注意下さい。

 なお、「亜鉛トローチ」は厚労省のHPでもインフルエンザ及び風邪に有効として掲載されていますが、定かな理由は分かりませんが日本製品の販売はありません。しかし輸入品を簡単に入手できます。なお、「亜鉛不足は論外」と先述したように、通常は亜鉛の経口サプリメントを摂っていますが、風邪を引いたかなと感じたら「亜鉛トローチ」を直ぐ摂るようにしたいと思います。



マヌカハニー
 インフルエンザウイルス(H1N1)のイヌ腎臓上皮由来細胞(MDCK細胞)への感染実験において、マヌカハニーは他の種の蜂蜜よりも高い抗ウイルス効果を有します。さらに、リレンザやタミフルの単独使用と比較して、マヌカハニー(3.13 mg/mL)を併用するとリレンザやタミフルの使用量を1000分の1近くまで減らしても同等の抗ウイルス効果が得られることが判明したことが2014年に報告されました。

 アボリジニの人々が何世紀にもわたって利用して来たマヌカハニー ですが、品質基準(MGO、UMFなど)が様々で(当然、効果の高いものは高額)、どの製品を選んだらよいかが分かりにくいのが欠点です。しかし、日常的に摂取するのではなく 風邪を引いたかなという時に摂るのであれば、ある程度高額な製品を冷蔵庫に忍ばせておくと安心です。


その他の対策

鼻うがい(生理食塩水[0.9%])
 「鼻うがい」が「ウイルスの物理的な剥離」には留まらないことが2018年に報告されました。生理食塩水中の塩化ナトリウムが、DNA及びRNAウイルスの複製に対して用量依存的な阻害をもたらすという内容です。この抗ウイルス効果の一つは、塩化ナトリウムの塩素イオンが細胞に取り込まれ次亜塩素酸が生成される働きに拠ります。つまり、「鼻うがい」では鼻にツンと来るのを抑えるために生理食塩水を用いますが、生理食塩水には抗ウイルス効果もあるということです。実施にあたっては、投稿「鼻うがい(新型コロナ、慢性上咽頭炎の対策)」をご参照願います。

高張生理食塩水(~2.6%)の点鼻
 高張生理食塩水点鼻薬(~2.6%)を使用(各鼻孔を1日4回少なくとも3滴)すると 子供の一般的な風邪の長さを2日間短縮(8日→6日)できることが、2021年に報告されました。上述の「鼻うがい」と原理は同様ですが、生理食塩水よりも塩化ナトリウム濃度が高いのでより効果が高いということです。

 「高張生理食塩水」を自分で作製するのは少し面倒だと思っていたところ、下記の製品を見つけ早速購入しました。これであれば、風邪に罹った際はもちろん、外出先でも「鼻うがい」に比べ手軽に実施できる点において非常に優れています(携帯にはやや大きいのですが・・・)。鼻うがいの様に少し上を向いてミストを流し込むのがコツです。


補中益気湯、葛根湯(漢方薬)

 投稿「補中益気湯、葛根湯(漢方薬)」をご覧下さい。

睡眠
 6時間未満の睡眠で4.2倍も風邪を引きやすくなるという2015年の報告があります。このように、「睡眠負債」が溜まると免疫機能が低下します。また、インフルエンザのワクチン注射を打っても睡眠不足の人は抗体が出来にくい2002年に報告されています。睡眠改善に関しては投稿「睡眠測定アプリ・スマートウォッチ」をご覧下さい。

マスク
 コロナ禍ではマスクの有用性について多くの議論が交わされました。高性能なマスクであっても完璧に装着するのは難しく、ウイルスの飛散を防ぐことはできても吸引を完全に防ぐのは困難と考えられます。一方で、例え布マスクであっても装着することで「鼻を触らない」、「鼻腔内の湿度を保つ」といった効果が期待でき、感染予防に一定の役割を果たすことも事実です。

下着
 投稿「日常生活にも登山用下着を取り入れて体調管理を!」をご覧下さい。 

空気清浄機
 投稿「プラズマクラスター空気清浄機を旧型から新型NEXTへ買い換えた感想」をご覧下さい。

まとめ

 風邪を引き起こすウイルスは200種類以上あり、ライノウイルス(風邪の約30%〜50%の原因)やコロナウイルスの他にもRSウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルスなどがあります。なお、インフルエンザはインフルエンザは風邪の一種と捉えられることもありますが、インフルエンザウイルスが原因となる異なる疾病です。

 野口整体で知られる野口晴哉さんの「風邪の効用」を20年位前に読みましたが、ずっと覚えている内容に、「時々風邪を引くことで体を正していくと、大きな病気にもかからない」というのがあります。そして、野口氏自身は「くしゃみを数回することで風邪は身体から出ていく」とも言っています。医学的な説明は難しいとしても、非常に印象に残る考え方だと今でも思います。

 私は20~40歳ぐらいにかけて季節の変わり目には風邪をひくことが多かったのですが、健康に留意するようになってからその回数が減り、今では風邪で寝込むことはめっきりと減りました。知り合いには、この20年ぐらい風邪を引いた記憶がないという方もいますが、そのような身体を目指すのはかなり難しいので、風邪のウイルスが身体に入ってきたらそれを敏感に察知して対応することが一番大切だと考えています。

 「くしゃみを数回することで風邪が身体から出ていく」状態は難しいにしても、早く対処できれば翌朝には風邪にかからずに済むことが良くあります。一方で、対処が遅れると安静にしても 悪い方向へ向かったベクトルはもう戻すことは出来ないこともよく経験します。

 いかに風邪に早く対処するかという点においては、「補中益気湯、葛根湯の摂取」、「高張生理食塩水の点鼻」、「亜鉛トローチの摂取」が特に有効であることを このブログを纏める中で改めて認識しました。今回の内容に新たな発見があれば幸いです。