
今回は、これまでとは かなり異なる内容ですが、意外にも健康に密接に関わる内容だと思うので ご紹介します。実は私、家を建てたときに外構(通路、門扉、植栽などの空間演出)を設計したことがある程の「庭好き」なのですが、マンションに住むとそのようなことは出来ず、睡蓮鉢と植木鉢を置く位しかしていませんでした。
ところが、何故か ふと「ベランダを和空間に出来ないか」と思い立ち、早速ネットで調べてみても 私が思い描く様なものはなく、それならばと自分で設計し実行に移したら、予想以上に短時間(実作業1時間)に 低価格で仕上げることが出来、しかもここが大事なのですが「見ていると非常に落ち着く」ことから、この機会にご紹介したいと思います。
和空間づくりの要
定年後に京都に移住し 早や3年が過ぎました。多くの寺社を訪れて庭園を眺める機会も多い中で、ベランダに「和空間」を作るうえで何が肝となるかが分かってきました。これまでも、先述のように「睡蓮鉢」や山苔、モミジを植えた「植木鉢」を置いてはいましたが、とても「和空間」と言える状態ではありませんでした。
① 杉の敷板
ベランダに木目が美しく 長持ちする(人体に無害の防腐処理がされた)杉板を敷いたことがこの計画の一番のポイントです。これを可能にしたのが厳島神社や愛知万博、金沢城などでも多数採用されている「エコアコールウッド」という木材です。従来の防腐処理のように毒性のある薬剤を木材内部に注入するのではなく、低分子フェノール樹脂を注入して硬化させ、物理的に分解されにくい構造に変化させることで菌や虫の侵入・繁殖を防いでいます(実用耐用年数は20~25年)。さらに、細胞壁が固定されることで木材の膨張・収縮が抑えられ、「割れ」や「反り」が起こりにくいといった利点もあります。追加料金でカットもしてくれるので、ベランダの寸法さえ測れば全面を覆うことも簡単です。本材はウッドデッキ用なので面取りがされており、板面も滑らかで裸足でも足触りが良く、また余り期待していなかったのですが「杉の香り」がきちんとするのも特徴です。
② 簾(すだれ)
「和空間」の演出に大きく貢献するのが「簾(すだれ)」です。いろいろなサイズが売られているので、合う簾を見つけるのは容易でしょう。丈が長い場合には下側を巻き上げて止めることで解決します。なお、簾を固定するのに「ブロンズ色の物干し竿」を使ったのが独自のアイデアです。落ち着いた感じを演出するのに効いていると思います。
・焼竹すだれ(74 x 90 cm)
・物干し竿(ブロンズ)
③ 季節柄の日本手拭い
これも独自のアイデアだと思いますが、簾に季節を題材とした「日本手拭い」を垂らすと非常に良い雰囲気となることに気が付きました。寺社の日本庭園には季節ごとの趣がありますが、植栽が困難なベランダでは望めません。それを「日本手拭いの柄」で叶えられるのです。簾の上部2か所を「アルミ製洗濯ばさみ」で止めていますが、レトロ感だけでなく、物干し竿と簾の狭い隙間にも入る優れものです。
アマゾンでも様々な柄の「日本手拭い」が売られています。当初は四季毎に交換すればいいかなと思っていましたが、今では来月はどれにしようかと柄選びを楽しみしています。
・日本手拭い
・アルミ製洗濯ばさみ
④ エアコン室外機周り
「和空間」の演出を大きく邪魔するのが「エアコン室外機」でしょう。この人工物が、せっかく作った「和空間」の雰囲気をぶち壊してしまいます。当初、ルーバーが付いた木製の室外機カバーの導入を考えて、あと一息で注文するという段階で思い留まりました。というのも、その室外機カバーは洋風なのでミスマッチなのです。
そこで、網目の細かい「転落防止ネット」を使うことで室外機の存在を薄めることが出来るのではないかと考えました。さらに、室外機の上に無垢板を置くことでさらにその効果が高まるのではないかとも考えました。これらは独自のアイデアだと思いますが予想以上の効果があり、人工物の室外機が和空間に上手く馴染みました。
・転落防止ネット
・無垢板(杉か桧の無節が良いでしょう。好みの大きさで注文できます。)
また余談として、写真をよく見ると分かるのですが透明のプラ板でルーバーを自作しました。少し手間ではありますが、生き物(植物、メダカなど)を育てる場合に非常に有効です。実際に、猛暑でもベランダに熱気が溜まるのを回避出来るようになりました。
⑤ 植木、睡蓮鉢
日本庭園をイメージして「植木鉢」にはモミジを植え、「植木鉢」の表面には山苔やシダを育てています。床に置いた「植木鉢」のヤマモミジは昨年の猛暑で枯れてしまったので(昨夏は室外機の熱風を浴びたので)、そのうち 木賊(トクサ)でも植えようかと思っています。
睡蓮鉢にはメダカ、ヌマエビ、サカマキガイがいますが、水は継ぎ足すだけでセットアップした2年前から交換したことはありません。このような状態だと板敷の上に置いても下手に濡らしてしまう心配は要りません。
なお、植木鉢や睡蓮鉢の世話が手間であれば「枯山水」ということで、何も置かないというのも全然ありだと思います。




科学的にも実証された「木目」の脳への影響
「出来るだけ手間をかけずにベランダに和空間を作ろう」と思い、いざ実行に移すと予想よりも簡単に出来上がり、しかも出来上がった「和空間」をずっと眺めていたくなることに不思議な感覚を抱きました。杉の無垢板の「年輪」と「光の柔らかな反射」がきっと関係しているのではないかと思い調べてみると、やはり予想通りで、「脳への良い影響」が実証(リンク1、リンク2)されていることが分かりました。
それによると、木材は視覚、嗅覚、触覚と様々な面から脳をリラックスさせることが知られていますが、視覚的には、「不規則な年輪」が1/f 揺らぎを生み出すこと、そして人工物では得られない艶やかな反射光を生み出すことが脳をリラックスさせるそうです。
なお今回、敷き易さの観点から深く考えずに板を縦に敷きましたが、「縦敷き」にしたからこそ「和空間」と感じるのではないかと思っています。過去にお寺に行ったときの写真を調べてみましたが、下の写真にあるように日本庭園の縁側は多くが縦敷でした。このような情景が無意識のうちに頭に浸み込んでいるのか、又は科学的に説明がつくのか分かりませんが、「縦敷き」であることが重要なポイントだと思われます。

また、「簾(すだれ)」の不均一さも木目(年輪)同様の脳に対する効果(1/f 揺らぎ)をもたらすと同時に、「縦敷き」の杉板に対して横方向のベクトルをもたらすことで好バランスを感じるのだと思います。

まとめ
以前に比べて、このベランダを眺める時間がずっと増えました。以前から和風庭園には興味があり、京都に住んでからは 特に「坪庭」には今流行りのミニマリストに繋がる「削ぎ落された美」を感じていました。しかし、マンションに住んでいると「庭は観に行くもの」と思い込んでいたようです。京都に住んでいるので尚更そう考えていたのかもしれません。
今は作庭 (?) を終えてまだ気分が高まっていることもあり、毎朝、濡れた手拭いで敷板を拭きあげています。すると杉の香が「もわぁ」と立ち込めます。年月が経てば、そんなことも面倒になり しかも木が色褪せるのでしょうが、それはそれできっと趣があり どのよう変化していくのか楽しみにしています。
なお、仮に「マンションの大規模修繕」があっても、自分の手で外して保管し、また組み直すことも容易だろうと思っています。