初めての「眼科ドック」で緑内障がみつかった



 2022年の定年後、「人間ドック」を受けないと宣言している医者(近藤誠、安保徹、和田秀樹、岡田正彦ら)の本を読みました。その影響もあり、会社員時代には当たり前のように続けていた「人間ドック」の受検をやめて 血液・尿検査を中心とした「特定健康検診」を2年連続(2023、2024年)で受検しました。しかし昨年(2025年)、「特定健康検診」だけでは 少し心配に感じて「人間ドック」を久しぶりに受けました。

 その結果、「特定健康検診」では検査項目にない「眼の検査」では、両目ともに「視神経乳頭陥凹異常」で「要検査」の判定でした。ちなみに「視神経乳頭陥凹異常」に関しては、過去の「人間ドック」でもたびたび指摘されており、精密検査した結果 特に問題がなかったので あまり深く考えてはいませんでした。

「眼科ドック」とは

 実は「眼科ドック」なるものがあることを最近まで知りませんでした。実際に必要に迫られる前から、親知らずを抜歯するならこの医院、白内障の手術をするならこの医院、膝のMRI検査をするならこの医院などと、AIから情報を得ながら医院のHPを確認しグーグルマップにマーキングして楽しんで (?) いますが、そんな中で近くの眼科のHPに「眼科ドック」があるのを見つけました。料金10,000円、所要時間60分とのことです。

 実は「眼科ドック」を標榜する眼科はほとんどありません。しかし、心配はいりません。「眼科ドック」というと何か特別な感じがしますが、下記の赤枠で囲った三次元眼底検査(OCT)とハンフリー視野計(自動視野計)がある眼科を探しさえすれば、後の検査は一般的な検査なので「眼科ドック」同様な検査が実施できるからです。

 

眼科ドック」の検査内容例。赤枠の検査は高額な機器が必要なので実施できる眼科は限られる



 とはいえ、「眼科ドック」というシステムやネーミングは、結構上手いなと思いました。普通、60歳を超えると若い頃のように眼が効きません。私の場合だと、近視や老眼の進行はもちろんですが、飛蚊症で見えるゴミの数が明らかに増え、また 薄暗いときには見え難くなりました。さらに、年齢的にも白内障などの可能性も知りたいところです。そういう時に、「眼科ドック」と聞くと、つい受けてみたくなるものです。ということで、昨年の「人間ドック」で要検査だったからというのが「眼科ドック」を受ける直接の理由ではありませんでした。

「眼科ドック」の実際

 今回、「眼科ドック」を妻と受けました。妻は特に眼に自覚症状はないものの、妻の父親が白内障と緑内障であったことから その遺伝を心配したのが受検の理由です(後に白内障は遺伝しないことが判明)。ただし、「眼科ドック」は同一時間には一人だけ可能ということで、私は午前診療開始10時を、妻は午後診療開始14時を予約しました。

 多くの検査は時間がかからずに終わりましたが、「ハンフリー視野計(自動視野計)」だけは片目あたり数分かかりました。機器のドームの奥にある中心の光をじっと見つめ、 周囲にパッと光が見えたら手に持ったボタンを押します。この光が気のせいかどうかというくらいに薄明かりな場合もあるので、検査時間中は かなり集中が必要です。そして、視野欠損があれば その状況が確認できます

 結果は検査終了後に医師から一人ずつ聞くことも可能だったのですが、妻の結果が出てから同時に聞くことにしました。結果的に、二人同時に面談したことで結果の差(妻は正常だったので)が より具体的に分かり良かったと思います。

 恐らく20分くらいは医者から丁寧に説明してもらったでしょうか。これで10,000円(保険適用なし)は 決して高くないと思いました。

結果はいかに

 結論からいうと、私は両眼ともに緑内障の所見がみられ、さらに右目は軽度白内障という結果でした。一方、妻は何の問題もありませんでした。

 具体的には、私は眼底撮影で「視神経乳頭陥凹異常」が、三次元眼底解析で「網膜神経線維層の軽度薄化」が、そして視野検査で「視野欠損」が認められました。ただし、VFI(視野指数)が90%以上あるため、まだ見えている範囲は広く残っており、早期に発見できたと言えます。なお、眼圧は右眼15 mmHg、左眼14 mmHgと正常の範囲でした。

両眼ともに上部の視野に黒い欠けが見られ「視野欠損」と判明



 20年くらい前に人間ドックで「視神経乳頭陥凹異常」を指摘された後に受けた視野検査では「異常なし」だったので、その後 油断して精密検査を受けずにおりましたが、今回、「眼科ドック」というネーミングにひかれて精密検査を受けて緑内障に気付く事が出来て本当によかったと思います。

緑内障とは

 緑内障は失明原因の第一位として知られます。「白内障」は白く眼が濁るからそう呼ばれますが、「緑内障」の「緑(みどり)」にはどのような意味があるのでしょうか? 実は診断時の瞳孔反射の色が語源だそうです。

 緑内障は眼球内の房水による眼圧の影響で視神経が徐々に傷み、視野が欠ける病気です。しかし、日本人では眼圧が正常範囲でも発症する正常眼圧緑内障が多く、その場合でも視神経を守るために眼圧を下げる治療が重要になるとのことです。



 下表は年代別の緑内障と白内障の罹患率ですが、白内障は80代ともなればほぼ100%の人がなるのに対して、緑内障は9人に1人程度と意外と少ない病気です。

 

年代別の緑内障、白内障の罹患率
(日本緑内障学会「多治見スタディ」および日本白内障学会等のデータを基に作成)



 そして、白内障は見えづらさを感じてから治療しても改善が期待できる一方、 緑内障は自覚症状がほとんどないまま進行し、気づいた時には失われた視野が戻らないために早期発見が極めて重要な病気だということです。

緑内障の治療を開始

 緑内障が失明の第一原因であると聞くと、やはり恐怖を感じます。しかし、初期の緑内障であれば「目薬による眼圧低下」が治療の第一選択であり、手術はかなり進行した場合の最終手段です。このことからも、早期発見が極めて重要であることが分かります。

 私の場合は初期の正常眼圧緑内障だったため、プロスタグランジン系の目薬(目の中の水分「房水」の排出を促す作用)が処方されました。気になる副作用として「まつ毛の増加・目の充血・まぶたの黒ずみ(色素沈着)」などがありますが、全身への重篤な副作用は少ないとのことです。

 治療開始から1か月後の眼圧測定では、幸いにも両眼ともに10 mmHg(治療前は右眼15 mmHg、左眼14 mmHg)と順調に下がっていました。この状態を維持できれば視神経への圧迫はほとんどなく、進行を抑えられるだろうとのことでした。

緑内障治療の注意点

 診察では詳しく触れられませんでしたが、自分で情報を集める中で「これは重要だ」と思えることが2点ありましたので記しておきます。

①目薬の使い方
 プロスタグランジン系の目薬は1日1回(夜)点眼しますが、1滴さした後に「目頭を軽く押さえたまま、1分以上目を閉じておくこと」が重要です。これには以下のメリットがあります。

薬の流出防止と効果の安定化(角膜からの吸収量が増える)
全身の副作用軽減(鼻の粘膜から全身へ吸収されるのを防ぐ)

眼圧の日内変動
 眼圧は、1日の中での変動(日内変動)の個人差が非常に大きく、中には5〜8 mmHg以上も変動する人がいるそうです。房水が作られるリズムや排出路のつまり具合、自律神経、睡眠時の姿勢などが影響するためです。 一方で、「日間変動(日による違い)」はそこまで大きくないそうです。私の場合、治療前と治療1か月後の眼圧はどちらも正午前後に計測したため、数値を比較することには十分意味がありそうです。 しかし、眼圧のわずかな変化に一喜一憂するのではなく、継続して測り、長期的な眼圧の低下を確認していくことがポイントだと考えています。
 

まとめ

 昨年の人間ドックにおいて、眼の項目で「要検査」の結果を受けていたにもかかわらず、私はそれを放置していました。しかし、「眼科ドック」というネーミングに惹かれて自発的に検査を受診したことが、結果として緑内障の早期発見につながりました。

 過去の投稿「がん と診断された時にどう行動しますか?」でも記したように、病気によっては早期発見が必ずしも有効とは限らないものもあります。しかし、そのような中において「緑内障」は、早期発見の有効性が極めて明白な病気です。

 この記事を書き進めながらふと思い当たったのですが、人間ドックの「要検査」の延長として眼科を受診していれば、保険適用で検査ができたはずです。「眼科ドック」というパッケージ自体は保険適用にならなくても、保険診療の枠内で必要な検査を重ねていけば、結局は「眼科ドック」相当の検査内容になったのだろうと思います。今となっては後の祭りですが・・・。