
「健康のために “1日8,000歩” 」と言われて久しいですが、そのときに靴に入れるインソールの重要性は想像以上に大きい です。なぜなら、歩行時の衝撃(刺激)が 足裏から骨格へ正しく伝わるかどうかは、インソールの形状によって大きく左右されるからです。
私自身、山歩きが趣味で、しかも膝痛持ちでもあることからインソールには強い関心があり、これまで数多くの製品を買っては試してきました。同じような悩みを抱え、インソール探しをしている方も少なくないのではないでしょうか。
2025年11月、花王(株)がインソールを販売
洗剤や歯磨きなどのヘルスケア製品といえば真っ先に思いだす あの花王(株)がインソールの販売を開始しました。それだけだと少し話題性に乏しいのですが、「姿勢のゆがみを解析する無料アプリ(my Symmetry) 」の配信も同時に行っており、それが注目を浴びています。
意外なことに、花王は長年に渡り歩行姿勢研究を行っていたそうで、その成果が実り、今回 骨盤や関節の動きや左右差、可動性を定量化する技術を構築し、姿勢のゆがみを自ら認識し、自らコンディショニングを行うことをめざすツールとしてアプリ(my Symmetry) を開発しました。「解析結果から、自分に合うインソールを3種類の中から選ぶ(リンク)」という流れでの販売促進を花王は狙っていますが、このアプリが秀逸なのでご紹介します。
スマホ用アプリ「my Symmetry」を使ってみた
アプリ「my Symmetry」には iphone、アンドロイド用が用意されています(ダウンロードは花王HPより)。アプリの説明通りにして約8歩歩くだけで解析ができます。実際に使ってみると特に難しい点はなく、スマホの上下、向きを間違わないようにお腹に充てることさえできれば大丈夫だと思いました。

16回測定したところ、20~63点と幅広く得点が分布し(下表)、「測定ごとに これだけ結果がブレて大丈夫なのか?」と最初は心配しましたが、「骨盤のゆがみ」、「骨盤の傾き」、「骨盤のねじれ」に関する結果はほぼ一貫していて それら結果は信用が出来そうです。
さらに、室内で素足のまま測る場合(靴なし)と、屋外で靴を履いて測る場合(靴あり)では、解析結果に大きな差が出る ことも分かりました(下表)。屋外で歩くと室内よりも自然と歩幅が大きくなり、それが主な要因だと思われます。ただし、靴にどんなインソールを入れているかによっても結果が変わる可能性 は十分あります。むしろ、それこそが花王が狙っているポイントなのかもしれません。つまり、3種類のインソールから自分に合うものを選ぶことで、骨盤のゆがみ・傾き・ねじれが整い、解析データが改善する という考え方です。とはいえ、現時点では その効果を裏付ける具体的なデータは花王の公式サイトには示されていません。

このアプリの優れている点は、無料で何度でも解析できるだけではありません。その結果に応じて300通りのエクササイズの中から最適なエクササイズを2種類提示してくれ(下図)、その模範動画を見ながら約1分間 一緒に実践できる 仕組みがあることです(2種なので合計約2分)。短時間で取り組めて、画面を見ながら一緒に動けるためにモチベーションを保ちやすく、継続しやすい のが大きな魅力だと思います。これで身体(骨盤)のゆがみ、ねじれが整うかも と思うと興味が尽きません。半年ぐらい経過後に、その成果?の有無をお知らせ出来ればと思います。

2025年11月、Dymo Kneeseインソールが販売
花王が自社開発のインソール販売したのを知り、「今からインソールを販売しても、さほど利益にはならないのでは」と思っていた矢先、先日、京都駅地下街の一角で、4人ものお揃いの衣装を着た販売員が「Dymo Kneese(フットコンサルティングジャパン(株))」というインソール(11月販売開始)を宣伝している場面に出くわしました。

この製品は「産業 × 学術 × 医療」連携で開発された点を特徴としており、膝への負担を抑えつつ足本来の機能を引き出す、特許取得の独自技術「Dymo® Shape」を採用しています。埼玉県立大学との実証データが公開されている点も、従来のインソールにはあまり見られない特徴です。
BMZインソールの「Cuboid理論」 とは
私が BMZインソール を知ったきっかけは、登山でした。登山者の約6割がダウンロードしているとも言われる、遭難防止に役立つオフライン対応の登山地図アプリ「YAMAP」。そのYAMAPが販売しているインソールがBMZ社との共同開発によって生まれた 「山を歩くインソール」 です。
膝に不安を抱えていた私は、それまでにもさまざまなインソールを試してきましたが、BMZ社が他社とは異なる独自の理論に基づいてインソールを開発している点に強い興味を持ちました。その理論とは、足の外側にある立方骨(Cuboid) を支えることで足全体の機能を引き出す、いわゆる 「Cuboid理論(= CCLP理論)」 です。
足は26個もの骨で構成されていますが、この立方骨を適切に支えることで土踏まずのアーチが自然に形成され、足指も本来のようにしっかり動かせるようになるとされています。YouTubeには多くの紹介動画がありますが、「この動画」 では足の骨格模型を使い、BMZインソールを使用することで足がどのように変化するのかが非常に分かりやすく解説されています。驚くことに、「BMZインソール」に足の骨格模型を載せると(立方骨を支えると)骨格がアーチを保ったまま潰れなくなるのです。
BMZ社も創業当初は土踏まず全体を固める ギプスタイプのインソール を製造していました。しかし、足を固定しすぎることで、かえって怪我のリスクが高まる可能性があることに気づき、立方骨を支える現在の仕様へと開発が進んだそうです。そしてこのCuboid理論は2012年に特許を取得し、現在 この技術は BMZのインソールのみに採用されています。
アスリートが好んで使うBMZインソール
「BMZインソール」をご存じの方は少ないと思いますが、アスリートにおける知名度は非常に高いようです。2014年のソチオリンピックでは、日本はメダル8個を獲得しましたが、なんと そのうちの4人がBMZインソールを使用していました。また、プロ野球の川崎宗徳、内川聖一、鳥谷敬内選手らもBMZインソールを使っていたそうです。現在も多くのプロアスリートが使用していることが紹介(リンク)されています。
これからも分かるように、当初は足首が固定され、エッジや刃に重心を正確に伝えるウインタースポーツ(スキー、スノボ、スケートなど)で評価されましたが、今では様々な種目のアスリートに評価されています。一方で、「履いた瞬間に楽」というよりも「慣れると良さが分かる」タイプということが原因で、BMZインソールの評価は人によって大きく分かれているようです。
私は「山を歩くインソール」が足先のインソールの厚みのために圧迫を感じたので、足先の厚みが薄い「カルパワースマートストライカーレッド 」を好んで履いています。これら以外にもさらに異なる2タイプを持っていることからも分かるように、BMZインソールのデメリットとして、種類が多すぎて購入に際して どれが自分に合うかを非常に選びにくい点が挙げられます。【追記】調べると、BMZ総合カタログで自分に合うインソールを選べることが分かりました。
BMZインソールの立方骨を支える出っ張りは、硬いプラスチック成形ではなく、あえて「つぶれる」材質で作られています。そのため、製品や使用時間にもよりますが、3~12か月での交換が推奨される点を不経済に感じる人が多いと思います。しかしこれは、消耗品として売り上げを伸ばすためというよりも、足の動きを固定せず、荷重の変化を受け止めることを重視した設計思想の結果だと考えられます。形状が変わらないことを良しとする、従来型の土踏まずを支えるインソールとは、そもそもの思想が異なるようです。
古武道、骨ストレッチ(WT立ち)とBMZインソール
飛脚は1日に数十〜100km近くを継続的に移動していました。足元は当然、クッションのない足袋や草鞋で、インソールなどは夢のまた夢だった時代です。それにもかかわらず、彼らが現代人の多くよりも長距離を走れた理由は、道具の優劣ではなく、身体の使い方そのものが極めて合理的だったからだと言えるでしょう。
最近、甲野善紀氏の提唱する「古武道」や、松村卓氏の「骨ストレッチ」に関する書籍を、本屋や図書館で数多く見かけるようになりました。私自身も興味を持ち、その中の何冊かを実際に読んでみました。前者はNHKの「趣味どきっ!」でも全8回にわたって放送されたことがあり、ご存じの方も多いのではないでしょうか。一方、後者については私は最近になって知ったのですが、陸上の桐生祥秀選手をはじめ、スピードスケートの高木美帆選手や小平奈緒選手など、日本を代表するアスリートの身体づくりにも関わってきた人物です。
すると、「古武道」で重視される身体感覚(拇指球[親指の付け根の盛り上がり]で踏ん張らないこと、小趾側[足の外側]から地面を捉えること)や、「骨ストレッチ」で示されるWT立ち(踵の中心と足の中指を結ぶ直線を肩幅でそろえ、平行に立つ姿勢)は、BMZインソールが提唱するCuboid理論(=CCLP理論)と、驚くほど多くの共通点を持っていることに気づきました。
特に古武道は教える人の身体感覚や表現に大きく左右されるため、習得に時間がかかる側面があります。その点、BMZインソールは「道具」として再現性を持ち、誰でも一定レベルまでは体感できるという意味で、身体の使い方を知るための非常に優れた「入口」だといえるでしょう。
まとめ
偶然にも2025年11月は、体感や経験則中心ではなく、実証データに基づいたインソールが相次いで登場する時期となりました。一方で、私自身は登山時の膝痛をきっかけに調べる中で、半年ほど前に「BMZインソール」を知りました。BMZインソールは2004年から販売されている製品ですが、私にとってはそれまで全く知らなかった存在であり、そういう意味では「今、熱い」インソールの一つです。ただし、開発思想はあくまで昔ながらの「体感・経験則中心」と言えるでしょう。
土踏まずをしっかり持ち上げるタイプのインソールに慣れていると、BMZインソールは当初かなり心もとない履き心地に感じました。しかし、「足の外側で着地し、中指の力を抜くイメージ」が理解しやすく、「本来の身体使い」に近づけるという考え方がモチベーションとなり、歩行そのものに集中できるようになります。結果として膝痛はほとんど感じなくなりましたが、サポートタイツやマッサージも併用しているため、どれが決定的に効いているのかは正直分かりません。それでも私がBMZインソールを使い続けている理由は、「多くの日本を代表するアスリートが認めているインソール」であること、そして「本来の身体使い」を身につけたいと考えているからです。
「花王やDymo Kneeseのような実証データに基づくインソール」、「従来型のアーチサポート型インソール」、さらには「古武道的な身体観にも通じるBMZインソール」と従来と比べて、インソール選びの選択肢は本質的な意味で大きく広がりました。加えて、どのタイプが自分に合うのかを確認できる無料アプリ(花王提供)も登場しました。脚や膝に悩みを抱えている方は、自分に合うインソール選びを今一度 試してみる価値がありそうです。
