LPSとは

 LPSは細菌(グラム陰性菌)の表面(外膜)を構成する物質です。したがって、LPSは細菌が付着する野菜や穀物などの植物に多く存在します。LPSは免疫を司るマクロファージ(体内の不要な物質を処理する免疫細胞)を活性化し、次項で述べるような様々な効能が期待できます。「LPSはエンドトキシン(内毒素)ショックを引き起こす原因物質」と認識していた私(医薬品業界では常識)は、LPSが健康に良いという話を知ったときには「本当?」と疑問に思ったものです。これは、LPSを血管投与をするか、経口投与又は経皮投与をするかの違いで毒になるか薬になるかが変化するということであり、非常に興味深いことです。LPSは、世間にまだ広く浸透していないと思われますが、2016年には本屋でもよく見かけるムック本のDr.クロワッサンで特集されました。

免疫ビタミン・LPSの効能(COVID-19対策)

 マクロファージは、脳、肺、肝臓、腸、骨、副腎、筋肉、皮膚など、全身の多くの組織に存在することから、マクロファージを活性化するLPSを摂取することで以下①~⑱のような驚くほど多くの効果を期待できます。①アトピー性皮膚炎改善、②胃潰瘍治癒、③やけど改善、④傷の早期回復、⑤疼痛・神経痛の緩和、⑥手術後の鎮痛効果、⑦薬の副作用低減、⑧がん予防、⑨アルツハイマー予防、⑩アレルギー予防、⑪花粉症抑制、⑫うつ病予防、⑬感染症(COVID-19を含む)予防、⑭高血圧予防、⑮糖尿病予防、⑯脂質異常症予防、⑯老化予防、⑰骨粗しょう症予防、及び⑱認知症予防などです。より詳細な情報は、食品機能性成分としてのLPSを発見した薬学博士・杣源一郎 氏が取締役を務める自然免疫応用技研株式会社(2006年設立)のホームページをご覧下さい。非常に内容が濃く、勉強になります。また、以下の書籍も参考になります。

LPSは体に良いといわれる食材に含まれる

 様々な微生物が共生する土壌(有機農法など)で育った野菜(特に根菜)、穀物(玄米、金芽米、全粒粉)、豆類、及びキノコ類などに特に多くのLPSが存在します。また、海藻、香辛料、葛、明日葉などにも多く含まれています。興味深い情報があります。免疫活性化能を持つ漢方薬「十全大補湯」は約10種類の生薬の混合物ですが、何が有効成分であるかに関しては最近まで明らかではありませんでした。2014年の報告から主要な有効成分がLPSであることが明らかとなりました。

衛生仮説とLPS

 衛生仮説という用語は、1989年の論文に はじめて登場しました。1953年3月に生まれた英国人 約17,000名のアレルギー疾患(花粉症、湿疹)の発症と環境要因を調査した結果、「衛生状態が悪い方がアレルギーになりにくい」という結果が得られ、衛生仮説と名付けられました。2008年放送のNHKスペシャル「病の起源 第6集 アレルギー ~2億年目の免疫異変~」を見ると(NHKオンデマンドで220円)、「衛生状態が悪い」の意味することが、LPS(番組中では「エンドトキシン」と呼ばれています)への暴露量を示すことが分かります。この番組で取り上げた研究者の報告がこの論文です。

LPSは医薬品になり得る 

 ワクチンと一緒に投与してワクチンの効果を高める物質をアジュバントといいます。最近まで効く理由が不明であったアルミニウム塩が今だにアジュバントとして使用され続けている一方で、2011 年にノーベル医学生理学賞が授与された要因となる自然免疫の報告以降、免疫システムを始動させる受容体TLR(Toll-like receptor)に結合する細菌成分が新たなアジュバントとして数多く開発されつつあります。そのうちの一つがLPSです。日東電工株式会社と大阪大学・京都大学の研究 グループは、LPSを舌下投与するとインフルエンザワクチンによるインフルエンザ抗体の産生が増強することを2015年に報告しています。いまだに上市されてはいませんが、LPSがサプリメントに留まらず、医薬品となり得ることを示す一例です。

LPSを効率よく摂るには

 ここでは、安全に手軽に摂取できるサプリメントとして「マクロ元気(マクロフューチャー株式会社)」を紹介します。この商品は食品機能性成分としてのLPSを発見した杣氏らが開発した方法(小麦粉をパントエア菌[グラム陰性菌で発酵培養)で製造されています。より詳細な情報は、食品機能性成分としてのLPSを発見した杣氏が取締役を務める自然免疫応用技研株式会社(2006年設立)のホームページをご覧下さい。

まとめ(コスト計算を含む)

 マクロファージは全身の多くの組織に存在することから、マクロファージを活性化するLPSを摂取することで、驚くほど多くの効果を見込めます。LPSを製品化したマクロ元気を1日に2袋(500 μgのLPSを含有)飲めば、感染症(COVID-19)やアレルギーだけでなく、うつ病、高血圧、糖尿病、脂質異常症、老化、骨粗しょう症、及び認知症などの予防に対しても効果が期待できると考えただけで、ワクワクしませんか。健康のお守りを手に入れたような気持ちと言ったらよいでしょうか。

 マクロ元気は公式オンラインやアマゾンで67~80円/袋で購入できます。ひとり1日当たり約140~160円(2袋)なので、家族全員となればそれなりに高額です。したがって、金芽米や胚芽米を主食とするなど、普段からLPSを意識して摂っているのであれば、2袋ではなく1袋に減らしても効果は期待できると思います。


 

【参考資料】

斎藤 博久 衛生仮説 呼吸応用糖質科学 25巻4号 p.373-377 (2006)