腸内フローラとは

 2015年にNHKスペシャルで放送されたことにより、「腸内フローラ(腸内細菌叢)」という用語が世間に広まりました(下記の本は、放送の内容のまとめ)。ヒトの腸内には数100種以上、約100兆個(体重の約1%~3%)もの細菌が住み着いており、その分布が個人毎に異なることが知られています。顕微鏡で腸の中を覗くと植物が群生したお花畑(flora)のようにみえることから、「腸内フローラ」と呼ばれるようになりました。

腸内フローラの役割

 腸には体全体の免疫細胞の約60%が存在することが知られており、腸内フローラを良好に保つことが免疫力を向上するために、つまり健康のために非常に大切です。腸内フローラのバランス(細菌の種類や量)は食生活、ストレス、及び年齢などにより大きく変化することが知られています。

腸内フローラを整えるには

 大腸に生育する酪酸菌が作る酪酸が制御性T細胞(Treg)という免疫細胞を増やす働きがあることが2013年に報告されました。そして、酪酸が大腸のエネルギー源として細胞に働きかけ、腸内環境を改善することが注目されています。酪酸菌は糠漬けや臭豆腐などに含まれますが普段の生活では摂取しづらいことから、サプリメントを有効に活用したいものです。

 ドラッグストアでも目にする整腸剤「強ミヤリサン(ミヤリサン製薬)」をご存じでしょうか。1933年に宮入博士が単離した酪酸菌(宮入菌)を製剤化したもので、1970年に厚生省によって医薬品(ミヤBM錠、ミヤBM細粒)としても承認されています。酪酸菌を含む整腸剤としては、ビオスリー(武田薬品)もありますが、こちらは含有される3種の菌の内の1種が酪酸菌なので、酪酸菌を多く摂りたい場合には強ミヤリサンがお勧めです。


 さらに、酪酸菌の餌となる水溶性食物繊維を多く含む海藻、穀類、及び野菜などを十分に摂取することも重要です。食の欧米化に伴い、水溶性食物繊維の摂取量は不足していることから、ここではヨーグルトにかけておいしく食べることが出来る難消化デキストリン(水溶性食物繊維の一種で特定保健用食品として認可)を紹介します。同様の製品は多数あり、どれも効果は大きくは変わらないと思いますが、製品によって結構、舌触りや味が違うので、好みのものを探すと良いでしょう。私のお勧め(美味しい)は以下の製品です。少しざらざらして甘みもあり、これをかけた方がヨーグルトが美味しく感じられます。


酪酸菌の効能(新型コロナ対策)

 腸内に酪酸菌を増やすことが免疫力の向上(新型コロナ対策)にいかに大切かは下記の本を読むとよく分かります。この類の本は数多あり、題名が過激なために「あり得ない」とやや引いてしまう方が多いと思われますが、著者は腸内免疫の大家であり、現在、東京大学名誉教授です。ちなみに、これらの本では 酪酸菌の餌として難消化デキストリンではなく、フラクトオリゴ糖(水溶性食物繊維の一種)を摂取することを推奨しています(難消化デキストリンと比べると高価)。
 
 このブログでは、難消化デキストリンが安価であり効果も変わらないと思われることから、「酪酸菌(強ミヤリサン)+ 難消化デキストリン」を推奨します。

実際に試してみた

 2018年当時、酪酸菌が注目を浴びているにもかかわらず、「具体的に何をどう摂ればよいか」に関する記事を目にすることはありませんでした。「酪酸菌とその餌を食べれば当然、腸内の酪酸菌が増えるだろう」という予測のもと、妻、子供を含めた家族3人ともに朝食時に強ミヤリサン(酪酸菌)3錠を飲み、難消化デキストリンをヨーグルトに小さじ一杯ふりかけて食べる生活を一年余り続けました。

 以下は、2019年に腸内フローラ検査「Mykinso(マイキンソー)」を実施した際の結果の一部を抜粋したものです(Amazonでも販売)。期待通りに酪酸菌(図中では酪酸産生菌)の腸内細菌に占める割合が平均値(12.1%)に比べて3人ともに大きく上回っていました。 

私の結果

妻の結果

子供(当時17歳)の結果

 正確に実験するのであれば、実験前にも腸内フローラ検査を実施して、腸内細菌中に占める酪酸菌の割合を実験の前後で比較する必要がありますが、残念なことに実験前の結果はありません(マイキンソーは2018年当時、発売前であったと思われ、腸内フローラを測定することを思いつきませんでした)。

まとめ(コスト計算を含む)

 腸には体全体の免疫細胞の約60%が存在することが知られており、腸内フローラを良好に保つことが免疫力を向上するために、つまり健康のために非常に大切です。大腸に生育する酪酸菌が作る酪酸が制御性T細胞(Treg)という免疫細胞を増やす働きがあることが2013年に報告されました。そして、酪酸が大腸のエネルギー源として細胞に働きかけ、腸内環境を改善することが注目されています。強ミヤリサン(酪酸菌)3錠とその餌となる難消化デキストリンを小さじ一杯食べるだけで、腸内フローラを構成する酪酸菌を増加させることが出来る可能性が示されました。

 強ミヤリサン(酪酸菌)は2022年10月現在、アマゾンにおいて1891円(330錠)で購入できるので、1日当たり約17円(3錠)です。難消化デキストリンはアマゾンで864円(400 g)なので、1日当たり約9円(4 g)です。従ってコストは1日当たり26円と非常に安価です。一方で、強ミヤリサンの1日摂取量の目安は3~9錠なので、1日当たりの摂取回数を2回、3回と増やすことでより早く効果が得られる可能性も高いと考えます(その場合のコストは~78円)。

【参考資料】
・宮里祥子 難消化性デキストリンの新たな生理機能 応用糖質科学 5巻4号 p. 204-207 (2015)
・赤川翔平 腸内細菌叢の乱れがアレルギー疾病の原因か プレスリリース 2021
・Flora Scan(フローラスキャン)腸内フローラ検査サービスHP