マンションのリフォーム: 珪藻土&無垢フローリングでどの程度快適になるのか?



 健康にかかわる「衣・食・住」のうち、「住」に関するお話です。投稿「心を整える_DIYでマンションベランダを和空間に」でお伝えしたように私は無垢材が非常に好きなのですが、調べてみると無垢材の「年輪」と「光の柔らかな反射」が脳をリラックスさせるさせることが科学的に証明されていることが分かり、非常に腑に落ちる思いがしました。

 そこでマンションの室内にも無垢フローリングを取り入れて、さらに壁も「漆喰」または「珪藻土」のような自然素材とすることが出来れば、視覚的な脳へのリラックス作用だけでなく、湿度や温度の調節作用によっても健康に寄与できるのではないかと考えました。

マンションに無垢フローリングは可能か?

 今でこそ、マンションを自然素材を使ってリフォームすることは当たり前となった感はありますが、私が以下の本に出合った2000年当時は、一戸建てではなくマンションにおいても「無垢フローリング」や「塗り壁」が可能なんだと目から鱗であったことを思い出します。その思いをずっと持ち続けていたので、マンションに住んだらそのようなリフォームをしたいと思っていました。

 


 マンションに無垢フローリングを敷設する場合には注意が必要です。なぜなら一般のマンションでは階下への騒音問題が生じないように「防音規定(例えばLL-45)」が定められているからです。したがって、マンションの管理規定を確認し、それに基づいて管理組合の許可を得る必要があります。ちなみに、マンションの防音規定をクリアーするには、以下の表のような工法があります。

工法                      特徴と注意点
① 防音マットを敷く直貼り工法(二重床でない場合)でよく使われます。無垢材の下に高密度の遮音マットを挟みますが、歩行感が少し「フワフワ」したり、床が高くなるためドアの干渉に注意が必要です。
② 二重床にするリノベーションで床を一度スケルトン(コンクリート剥き出し)にするなら最強の手法です。遮音性能の高い支持脚を選べば、その上に自由に無垢材を貼れます。
③ 遮音付き無垢材無垢材の裏にクッション材が直接貼られている製品です。選択肢(樹種や質感)が非常に限定されますが、施工は最もシンプルです。


 私は京都に住んでいますが、「高さ制限と階数の確保」の観点から多くの京都のマンションでは「二重床」ではなく「直床(コンクリートに直接フローリングを貼る工法)」が採用されています。したがって無垢フローリングを貼る際の選択肢は、自ずと工法①か③になります。工法③が最も手間がかからないのですが、幸いなことに納得できる以下の製品(以下)が見つかったことから工法③を採用しました。

 床材を決める時点で調べた限り、WOODONEが販売する「無垢ピノアース グランドフローリング L-45」唯一の遮音付き無垢材(ニュージーランドのパイン)でした。本製品には「塗装仕上げ」もありますが、無垢材の特性を最大限生かすためにも「自然塗料クリア色」としました。現在では、同社の製品に国産のヒノキ無垢材を使った「コンビットソリッドJ グランドフローリング L-45」もあり、選択の幅が広がったのは朗報です。


 
 無垢フローリングへ張り替えるにあたっての最大の懸念点は、「システムキッチンを外すことなくきれいに納まるか」でしたが、まったく問題なく仕上がりました。

 なお、せっかく無垢フローリングへ張り替えるのであれば、部屋と部屋の境のドア下の沓摺り(敷居のようなもの)をとってしまい 一続きのフローリングとすると空間が広く見えることも覚えておきたい技法です。

空間が広く見えるように、扉の下に位置する「沓摺り」を省き、板が連続するように施工してもらった


無垢フローリング(無垢ピノアース グランドフローリング L-45)のメリットとデメリット

メリット1:真夏でも「さらり」とした足ざわり
 自然塗装を施した無垢材は湿気が出入りするので、真夏でも足裏がまったくべとつきません

メリット2:真冬でも足裏が冷えにくい
 下図のようにWOODONEが販売する「無垢ピノアース グランドフローリング L-45」に用いられるパイン(松)材は、木材の中でも熱伝導率が非常に低い部類です。ちなみに、テントで寝袋の下に敷くウレタンマットの熱伝導率は0.03~0.05 W/m・Kとパイン材よりも2~3倍熱伝導率が低く、冬に素足を載せると暖かく感じる程です。一方、パイン材は暖かいと感じる程ではありませんが、「オーク」や「ウォールナット」に比べれば熱伝導率は2倍近く低いので、真冬に足裏が冷える際の対策として非常に優れていることを表します。具体的には、寒がりの私は冬に靴下を履きますが、暑がりの妻は冬でも裸足で大丈夫といえばわかり易いでしょうか。

WOODONEのHPから


メリット3:フワフワしない硬質な接地感
 工法①の場合には、防音マットの厚み(通常10~15 mm)や材質によって、また無垢フローリングの厚みが薄いとフワフワすると言われており、私も以前住んだマンションでそのような経験があります。そのマンションのフローリングは無垢ではなく突板でしたが、フローリングといえば硬いものだと脳が思いこんでいるためか、その違和感がいつまでも気になったのを思い出します。その点、「無垢ピノアース グランドフローリング L-45」は板厚は12 mmと薄めですが、遮音材も4 mmと薄いためにフワフワ感はありません。


メリット4:飴色への経年変化を楽しめる
 無垢フローリングは時間とともに飴色に変わり、魅力が増す傾向があります(感じ方は人それぞれだとは思いますが・・・)。下の写真は、施工時に余った「端切れ」を光を避けて保存していたもので、3年の間に驚くほど色が変化していることに改めて気づかされました。

3年での色の変化(遮光して保存してあった端切れとの比較)



デメリット:傷が付き易い
 熱伝導率が低いことの裏返しになりますが、パイン材は空気を含んで柔らかいので、「オーク」や「ウォールナット」などの木材に比べて傷が付き易いという弱点があります。濡れた布とアイロンを使って傷はかなり目立たなく出来ますが、特に最初の頃は気になる点といえるでしょう。

 しかし、無垢でないフローリング(合板の上に薄い天然木を貼った突板や挽板)とは違って、無垢フローリングでは「傷も味のうち」と思えるようになってくるのが不思議です。

マンションに塗り壁(漆喰、珪藻土)は可能か?

 塗り壁は一戸建てで用いるイメージがありますが、建物の動きが少ないマンションでは構造由来の大きなひび割れが起きにくく、むしろ向いているとさえいえます。現在、日本の住宅(新築マンション・一戸建て問わず)の約90%以上でビニールクロスの内装(昔のようにビニールには到底見えませんが・・・)が標準仕様なので、リフォームであれば、このビニールクロスの上に漆喰や珪藻土を塗ることになります。

 しかし そのまま塗るとビニールクロスが塗り壁の重みでクロスごとベリっと剥がれてしまうので、タッカー(金具)で固定したり、塗り壁材の水分が入り込まないようにクロスの継ぎ目を塞いだり、塗り壁材がビニールクロスから剝がれないように専用のプライマー(脚付け材)を全面に塗る必要があります。この辺りは、業者の領域ですが知っておいて損はないでしょう。

「EM珪藻土」を選んだ理由

 塗り壁の建材といえば「漆喰」や「珪藻土」が一般的ですが、実はメーカーや製品によってその性能が千差万別であることは、意外と知られていません。

 例えば、伝統的な漆喰は「消石灰・麻スサ・海藻のり」のみで作られ、高い調湿・抗菌性を誇ります。しかし、施工の難易度が高く、乾燥時の収縮によるひび割れも起きやすいため、新築マンションのクロス下地には不向きという側面があります。一方、施工性を高めた「既調合漆喰」もありますが、合成樹脂(ボンド成分)が多く含まれる製品では、漆喰本来の「呼吸する力」が弱まってしまいます。

 では、珪藻土はどうでしょうか。実は、珪藻土には漆喰のような数世紀にわたる歴史はなく、「伝統的珪藻土」という区分は存在しません。そのため、必然的に「既調合珪藻土」を選択することになります。

 ここで重要になるのが、その「固め方」です。自ら石に戻る性質を持つ漆喰と違い、植物性プランクトンの化石である珪藻土は、単体ではただの粉です。放っておけばボロボロと落ちてしまうため、必ず「固化材(接着剤)」が必要になります。つまり、珪藻土壁材の正体は「珪藻土 + 固化材」。この固化材に何を使っているかが、機能の差を決定づけるのです。

 珪藻土選びにおいて「伝統的」という言葉の代わりに重要になるのが、「自然素材系」か「合成樹脂系」かという区分けです。「自然素材系」は、食用のり、粘土、消石灰、にがり、焼成ホタテ貝などを用いて固めます。これらは珪藻土の微細な穴を塞がないため、調湿・消臭機能を最大化できるのです。

 数ある製品の中から、私が「自然素材系」の「EM珪藻土」を選んだ決め手は、その圧倒的な吸放湿量でした。JIS規格では24時間で70 g/m2以上の吸放湿量があれば「調湿建材」と認められますが、EM珪藻土は360 g/m2と規格を大きく上回る性能を持っています。一般的な合成樹脂系の珪藻土が50〜100 g/m2程度であることを考えると、その差は歴然です。その圧倒的な吸放湿量は、58%という最高水準の珪藻土含有率だけでなく、最も調質性に優れた産地(稚内産)の珪藻土を用いていることも理由の一つです。

株式会社 OKUTA HPより


 また、EM珪藻土には調湿性だけでなく、消臭、耐火、省エネ、さらには遠赤外線や自浄効果なども謳われていますが、これらの機能の幾つかも他社の珪藻土と比べて高いことが期待できます。

 ちなみに、今回調べる中でEM珪藻土と同じ稚内産で、珪藻土含有率が非常に高い(80%MPパウダーH(ミライエ株式会社)という製品を見つけました。もしも私が建材を選ぶ際に販売されていたとしたら この製品を選んだ可能性があるなと思いました。

塗り方で「効果」が変わる

 本ブログの冒頭で「自然素材が脳に与えるリラックス効果」について触れましたが、塗り壁もその一つです。無垢フローリングの「年輪」や「柔らかな光の反射」が脳を癒やすように、塗り壁の「コテが刻む不規則なリズム(1/f ゆらぎ)」もまた、年輪と同様に良い影響を与えてくれると考えます。

 そう考えると、仕上げのパターン(模様)選びも重要なポイントになります。私自身は、パターンが目立ちすぎると空間が騒がしくなると感じたため、最も控えめな「撫で切り仕上げ」を選択しました。ただし、この仕上げは職人さんの腕や癖によって表情が大きく異なります。そのため、まずは現場で実演してもらい、仕上がりを自分の目で確認した上で、全面の作業に入ってもらうようにしました。

落ち着いた表情の「撫で切り仕上げ」

 

 一方で、機能性を優先した場所もあります。それがトイレです。 珪藻土の「調湿や消臭」の効果は、空気に触れる表面積が大きいほど即効性が高まります。そこで、トイレの壁にはあえて凹凸を作る「櫛引仕上げ」を取り入れました。とはいえ、狭い空間ですべてを櫛引にすると圧迫感が出てしまうため、一面のみをアクセントとして施工し、機能美と落ち着きのバランスを図りました。

トイレで機能的な「櫛引仕上げ」



珪藻土と無垢フローリングで湿度はどうなったか?

 我が家(2LDK)の壁と床の面積から算出すると、EM珪藻土(吸湿量:360 g/m2)と無垢フローリング(吸湿量:250 g/m2)が保持できる水分の合計は、計算上「数十リットル」にも及びます。これは、家の中に巨大な水の貯蔵庫があるようなものです。カタログスペックを信じれば、「室内の湿度は常に40~70%の適正範囲でピタリと安定する」ことを期待せずにはいられませんでした。

 しかし、実際に住んでみると、その期待は直ぐに裏切られました。湿度は外気の変化に引きずられ、夏は高く、冬は低く推移します。冷静に考えれば、これは当然の結果でした。現代の住宅には、2003年の建築基準法改正により「24時間換気システム」の設置が義務付けられています。つまり、最低でも「1時間に室内の空気の半分」が入れ替わる計算です。さらに料理で換気扇を回せば、その換気スピードはさらに加速します。正直なところ、素材への期待が高すぎて、この「外気が常に入り続ける」という物理的な現実を過小評価していたと言わざるを得ません。

 それでは、自然素材への投資は無駄だったのでしょうか? 期待通りでなかったことは確かですが、無駄だったとは考えていません。3年経った今、私は「決してそうではない」と確信しています。湿度計の数値(%)以上に、日々の暮らしで実感しているメリットが3つあります。

建物へのダメージ抑制(カビ・結露のなさ): 壁が常に呼吸しているため、家具の裏など空気が滞留しやすい場所でも、湿気が飽和して結露することがありません。
「湿度管理」のコントロール性能: 確かに「自然放置」で40~70%を維持するのは困難ですが、冬の加湿器や夏の冷房を併用した際、目標湿度に到達するまでの速さと、その後の「粘り(安定感)」には、明らかなバッファー(緩衝)作用を感じます。
五感の心地よさ: 真夏でも足裏が「さらり」とする無垢材の心地よさは、数値には表れない贅沢です。また、不規則な年輪の木目や、左官職人のコテ跡がもたらす視覚的なリズムは、脳をリラックスさせてくれる大きな要因だと感じています。

 住み始める前にリフォームをしたので、同一条件において「珪藻土」と「無垢フローリング」の有る無しでの比較は困難ですが、あくまでもこれまでに住んだマンションとの比較しての話として、3年住んで感じるのは「湿度の数値上の安定」というよりも「住空間の清々しさと、建物へのダメージ(カビ・結露)の抑制」に珪藻土と無垢フローリングの真価があるということです。そして、冒頭にお話ししたように不規則な年輪やコテのリズムがもたらす視覚的な脳へのリラックス作用は非常に大きいと考えます。

 

まとめ

 今回、私が一番お伝えしたかったのは、「一戸建てでなくても、マンションという限られた空間の中で、本物の無垢フローリングや塗り壁を実現することは十分に可能である」ということです。

 もちろん、現在住んでいる住居をリフォームするには時間もお金も手間もかかります。非常に敷居が高く感じるのは事実です。 ですが、いつか訪れるかもしれないその機会のために、あるいは中古マンションを購入して新しい生活を始めるときのために、「自然素材という選択肢」を頭の片隅に置いておいていただければと思います。私が「マンションの中に世界でたった一つの木の家を建てる」という夢を、20年以上温め続けてきたように。

 使える建材(無垢フローリング、珪藻土など)は日々アップデートされています。私が今回選んだEM珪藻土やピノアースも、その時の技術や情報の集大成でした。将来、皆さんがリフォームをされる際には、また新たな素晴らしい素材が登場しているはずです。その時の「自分にとっての最適解」を選ぶプロセスそのものをぜひ楽しんでください。

 私は実験や分析が好きなので、つい部屋のあちこちで湿度を測り、その数値に一喜一憂してしまいました。「24時間換気がある現代の住居では、自然素材による湿度の安定は期待外れだった」という感想を抱いたのも、その数値に注目した結果です。しかし、数値にとらわれず、日々の生活を「感覚」で捉えている妻は、「この家は本当に快適ね」と日々満足そうに過ごしています。物理現象としての数値データは、確かに外気の影響を隠せません。しかし、素足で歩いたときの質感や深呼吸したときの空気の清々しさといった「数値化できない心地よさ」の中にこそ、自然素材を選んだ本当の正解があったのだと 今は感じています。