登山用下着の進化
私は高校時代(1977~1980年) 山岳部に所属していました。当時、登山用の下着の選択肢は殆どなく、部員は皆、暑い時期には下着を着ないで綿のシャツを、厳寒期にはウールの下着(通称ラクダシャツ)を着ていました。春や秋に何を着ていたのか今となっては思い出せませんが、少なくとも今のように、ファイントラック、ミレー、モンベル等から販売されているような「定番の登山用下着」はありませんでした。
山登りをしていないと、「定番の登山用下着」と聞いてもピンとこないと思いますが、登山は汗をかき、その汗で身体を冷やしてしまうことが問題なので、そのような観点から「定番の登山用下着」は作られています。
その原理はメーカーによって様々な特徴があり興味深いのですが、ここでは詳細には触れません。一般に登山用下着は、日常で使うにはオーバースペックなこともあり、着心地、見た目、値段などを考えると購入をためらうのですが、そういった中でも普段の下着として間違いなくお勧め出来るのが、モンベルの「ジオライン クールメッシュ」です。
私は、Men’sのTシャツとトランクスを愛用していますが、女性用はもちろん、首元の形(Vネック、ラウンドネック)、スリーブの有無など クールメッシュシリーズだけでも24種類もラインアップされています。クールメッシュ以外にも、生地の厚さによりライトウェイト(薄手)、ミドルウェイト(中厚手)、エクスペディション(厚手)シリーズと多種のラインアップがありますが、普段用の下着であれば冬であってもクールメッシュで決まりです。
特に気に入っている点として、日常生活であれば汗をかいてもまったく不快でない点、着心地が非常に良い点(超軽量で伸縮性が非常に高い)です。それでも値段が高ければ購入を躊躇してしまうかもしれませんが、決して高くはありません。
ユニクロ下着との違い
ちなみに私は以前はユニクロのエアリズム(メッシュ)の下着を好んで着ていましたが、ジオライン クールメッシュを知ってしまうともう戻れません。特に汗の処理に圧倒的な違いを感じます。
ジオラインの素材はポリエステル100%です。ポリエステルは含水率が殆どないので、通常であれば下着には不向きな素材です。ジオラインは上の写真のように繊維の1本1本に溝があり、毛細管現象で汗を皮膚表面から吸いだします。そして、繊維自体は水を含まないので直ぐに拡散・蒸発します。
一方、エアリズムの素材はポリエステル89%、ポリウレタン11%とジオラインと似ています。特徴として、100本近いポリエステル超極細の原糸を1本に束ねた糸で生地を編んでいることで、ジオライン同様に毛細管現象で汗を皮膚表面から吸いだします。その開発には繊維業界の雄 「東レ」が携わっていることから考えて、ジオラインに簡単に負けるはずはありません。
では、汗の処理に圧倒的な違いを感じる理由は何でしょうか? 恐らくですが、「編み方の違い」により差を感じるのだと思います。ジオライン クールメッシュは これ以上は無理ではと思うほど「疎」に編まれています。濃いサングラスをしているのと同じ程度に景色が透けて見えます。したがって、繊維周りの空気が容易に入れ替わるので、それだけ速く汗が乾燥するのでしょう。
一方、登山用ではないエアリズムは、耐久性、量産性などの観点から「密な編み方」を選択したのだと思われます。とはいえ、ジオライン クールメッシュの耐久性が低いとは感じません。確かに「疎」に編まれているので、ストッキングが伝染するような状態になってしまうことも間々ありますが、普通に着ている分には 2、3年は楽に着れます。その間に首元の伸びも殆どありません。
「下着で体調管理」は大げさでない
「下着で体調管理」というと大げさに聞こえるかもしれませんが、登山用を謳う下着は、悪条件下では生死を分けることがあるほど一般の下着とは性能が異なります。しかし、先述のように着心地、見た目、値段などの観点から日常で使うには不向きな面もあります。その点でモンベルのジオライン クールメッシュは普段使いに適しています。ただし、登山用として使うのであれば より適した製品もある と個人的には考えます。
では、ここでいう「下着で体調管理」とはどういうことでしょうか? 私は非常に汗かきです。夏であればその汗のために冷房で冷えすぎて風邪をひくといったことが容易に起こり得ます。そういったことを防ぎ、体調を良好に保ちやすいのです。
以前、投稿「意外と知らない冬に(寒いと)風邪をひく理由」の中で、「プロ野球の選手(特に運動量の少ない外野手)が寒い雨でずぶ濡れになっても平気な理由」に非常に興味がある旨を記述しました。その後 調べる中で、野球選手がかなり下着(肌に直接着るウェア)にこだわっていることが分かりました。例えばONYONEというメーカー(野球をしていないとまず知らないかも)の製品が、名だたる選手にも使われていることが分かりました。着るエアコン「ハイグレーダー」がそれです。登山用下着と同様に、プロ野球選手がシビアな環境でも体調を維持できる理由の一つではないかと思われます。
まとめ
今回は、これまでの投稿とは違う切り口からの健康に関する話題でした。「下着」は、地味でありながらも肌に直接触れることから、快適性のみならず 体調にも影響を与えます。一方で、「下着」は普段着用している製品にある程度 満足していると、新たな製品に替える機会が余りない衣類ともいえるでしょう。
しかも、普段使いの下着に関する情報を目にすることは余りありません(登山用下着の情報は多いです)。ということで、是非とも一度「ジオライン クールメッシュ」を試してみて下さい。きっとその快適さに驚かれることでしょう。