海藻のヌメリ成分「フコイダン」に刮目!


フコイダンとは

 「フコイダン」は馴染みのない用語だと思います。海藻(もずく、メカブなど)に含まれるヌメリ成分で抗がん作用があることから、「がん」と診断された患者が「何か効果のあるものはないか?」と探すと行き当たる可能性があるかもしれません。

 私が「フコイダン」を知ったのは、会社員時代に属していた動物細胞工学会(JAACT)で会長の九州大学の白畑教授が研究テーマにしていたからです。白畑教授は「日田天領水」という 今では全国のスーパーで目にすることの出来る大分県日田のミネラルウォータを、販売される前の1990年代から研究テーマの一つとして研究し発表していました。しかし、その研究テーマはいつの間にか「フコイダン」に移っていました。

 当時、私にはその理由が分かりませんでした。今回 調べて分かったこととして、白畑教授は天然に存在するものの中から身体に良い作用を持つものを探す中で、「日田天領水」は非常に有望である反面、良い結果を残すためには大量の飲用が必要であり、大きな壁を感じていたそうです。そして、「もっと良いものはないのか…」と試行錯誤している時に出会ったのが「フコイダン」でした(九州大学大学院HP)。「フコイダン」は九州大学以外にも、東京医科大学、鹿児島大学、鳥取大学、島根大学、群馬大学、タカラバイオ、ヤクルト本社、理研ビタミン、海産物のきむらや などでも研究される注目の成分です。「抗がん作用」以外にも、「抗アレルギー作用」、「肝機能向上作用」、「抗ウイルス作用」、「抗ピロリ菌作用」、「動脈硬化改善」、「生活習慣病改善」、「美肌作用」及び「育毛作用」など多くの効果が知られています。  

分子量20万超でも腸から吸収されるのか?

 フコイダンは水溶性食物繊維の一種で、分子量20万を超える高分子の成分です。具体的には、硫酸化フコースを主とする高分子多糖類で、糖類が10個以上つながっています。人間が体内に吸収できるのは分子量3000以下と言われており(今では誤りとされている:後述)、何も処理しないフコイダンを摂取したとしても ほとんどが体外に排出されてしまい、フコイダンが持つ作用を活かすことができません。そこで、白畑教授は貝が持つ酵素を用いることでフコイダンの構造を壊さずに低分子化することに成功しました。

 「もずく を食べるだけでは効果がないのか」と私は残念に思っていましたが、高分子のままの「フコイダン」にも効果があることが、鹿児島大学 及び 九州大学と共同研究している「内閣府認証 特定非営利活動法人NPOフコイダン研究所」のHPに載っていることが分かりました。さらに調べてみると、このような高分子の多糖類が腸から吸収されるメカニズムが報告されていることも分かりました。

「なた豆茶」も同時に摂ると なお良い

 九州大学では、「フコイダン」の がん細胞増殖抑制効果が「なた豆抽出物」により相乗的に高まることを見出しました。「なた豆」は、「フコイダン」同様に余り馴染みがないものだと思います。「なた豆」は熱帯原産で、日本へは江戸時代に伝わり、食用や薬用として栽培されました。「なた豆」を知らなくても、福神漬けの材料と聞けば、その形を思い出す方も多いでしょう。昔から排膿(膿を出す)の妙薬といわれており、腎臓の機能維持、蓄膿症、歯周病や歯槽膿漏、痔ろう などにも効果があるとされています。

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 「なた豆」にしか存在しない成分としてコンカナバリンAがあります。そして、「フコイダン」の がん細胞増殖抑制効果を相乗的に高める効果は このコンカナバリンAに依ります。私が会社に入社したての1990年頃、「あるタンパク質の精製」が研究テーマで、その時にコンカナバリンAが結合したカラム樹脂があることを知りました。コンカナバリンA(レクチンファミリーの一つ)は特定の糖タンパク質と結合する性質があり、その性質を利用して糖タンパク質を精製することが出来ます。レクチンは炭水化物に結合する特異性の高いタンパク質であり、多くの植物、動物、細菌に含まれています。コンカナバリンAの様な植物レクチンは、潜在的な捕食者や病原体を追い払うことが知られています。これからも分かるように毒性があるので生食は出来ず、水に晒す等の処理が必要です。したがって、お茶として非毒性濃度のコンカナバリンAを摂取することで「フコイダン」の がん細胞増殖抑制効果を高めていると考えて良いでしょう。

まとめ

 昨今の紅麹サプリ問題をみるにつけ、濃縮や抽出を経た加工品よりも天然物で効果が得られるならば それが一番安全だと感じます。「もずく」や「なた豆茶」は安価で美味しいので、是非、日々の食事に取り入れることをお勧めします。

 納豆やオクラなどネバネバした食品は健康に良いといわれ、「もずく」も例外ではない と思いつつ、そのまま食べたのでは「フコイダン」の恩恵には預かれないと思っていたことは先述しました。腸から吸収されるように加工した「低分子フコイダン」はサプリメントとして販売されていますが、非常に高価(1か月3万円超)です。

 しかし、「オメガ6系脂肪酸を控え、オメガ3系脂肪酸を摂る必要がある理由」でも記述したように、定説は時代と共に変わることがあります。「もずく」のような高分子は腸から吸収できないことが科学者にとっては定説でしたが、近年、腸から吸収されることが分かってきました。非常に興味深いことです。