がん予防 に関する情報を纏めました



 日本人男性の3人に2人、女性の2人に1人が生涯に “がん” と診断される発表されています。そして、日本人の死因の第1位は”がん”です。

 ところで、がん細胞は1日に5000個程度も出来るといわれます。そして、免疫細胞のうちのNK細胞が がん細胞を見つけ次第、攻撃して殺します。毎日、「5000勝0敗」の戦いが繰り返されますが、たまたま生じた「1敗」が “がん” の発端となることは間違いありません。1個が2個、2個が4個、4個が8個と倍々に増加し、「がん検診」で発見可能な約 1 cm(約10億個)となるのに30回の分裂が必要です。”がん” の種類等によって変わりますが、10~20年もかかるといわれています。そして、40回の分裂を経て生命を脅かす大きさである約10cmの塊にまで成長します。したがって、「早期がん」であっても “がん” の寿命としては既に4分の3を経過しているともみることが出来ます。

 1個の がん細胞が40回分裂するまでの間、ずっと免疫システムで排除されずにいられるという事実は、生活習慣(喫煙、飲酒、食生活、身体活動[運動]など)や環境(ストレス、化学物質、感染[肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ピロリ菌など]など)を変えない限り、がん細胞の増殖を止めるのが難しいことを表しているといえます。一方、三大治療(手術、化学療法、放射線治療)をせずに食事療法だけでも “がん” が縮小・消滅してステージ4からでも生還出来る がん患者が少なからず存在することは、10~20年間以上も身体から排除されなかった “がん” が、有効な契機があれば排除されることを意味する非常に興味深い現象です。

 ちなみに、齢をとっていれば、多くの方は「がん検診」で見つかる前段階の “がん” が身体のどこかに潜んでいると考えて間違いありません。したがって、身体に潜む がん細胞数が一番少ない今が「がん予防」の一番の始め時です。

 

がん予防の実際

 これまでに本ブログで紹介した「がん予防」に関連する内容を纏めました。初めて読まれる方は、「何でこんなに大事なことを今まで知らなかったのだろう」と思われることでしょう。そして、「単なる栄養素(ビタミンや油脂)の摂取などで がん患者数が激減してしまっては困る勢力が世間へ広まることを邪魔している」という陰謀論?もあながち否定出来ない気持ちになるかもしれません。

生活習慣(喫煙、飲酒、食生活、身体活動など)や環境(ストレス、化学物質、感染など)の見直し

 先述した様に、以下の対策に取り組む前にまず考えるべきことです。

② ビタミンD、オメガ3系脂肪酸の摂取、及び 簡単な筋力運動(スクワットなど)の組み合わせ

 投稿「がん発症リスクを抑える栄養素(日本人で不足)が論文発表されました」でもお伝えした様に、ビタミンD、オメガ3系脂肪酸の摂取、及び 簡単な筋力運動プログラムを組み合わせることで、高齢者のがんリスクを61%減らすことができる可能性が報告(2022年)されました。しかし、COVID-19に対するビタミンDのときと同様(他項「ビタミンD」で解説)に厚生労働省 及び マスコミはまったく取り上げないので、ご存じない方が大半と思われます。

 このように “がん” 及び COVID-19に対してビタミンDが効果を示す理由のひとつに、現代人においてビタミンDが不足していることが挙げられます。東京慈恵会医科大学のプレスリリース(2023年)で「殆どの日本人の血中ビタミンD濃度は不足とされる基準 30 ng/mL未満であり、その多くは欠乏とされる基準 20 ng/mL未満」という驚きの内容が報告されましたが、この事実もご存じない方が大半でしょう。飽食の時代にあって、欠乏するビタミンがあるとは多くの方が思っていないのではないでしょうか。


東京慈恵会医科大学のプレスリリース(注:横軸の単位はng/mL)

 現代人にビタミンD不足・欠乏する人の割合が高いのは、日光を浴びる機会が減ったこと、また、その機会があっても1980年代以降の日焼け止めクリーム の普及により、皮膚でのビタミンD合成が十分に行われないことが最大の原因と考えられています。 

 ここに非常に興味深いデータを紹介します。2008年のEsri会議で発表されたもので、国際がん研究機関のデータベースから得られた各国(図中の3文字が国名の略、詳細割愛)における大腸がん 及び 乳がんの発症率と緯度の関係を纏めた図です。低緯度(太陽光が強い)の国民に比べて高緯度(太陽光が弱い)の国民の がん 発生率が高い傾向にあることが分かります。

大腸がん発生率と緯度の関係

乳がん発症率と緯度の関係



 これらデータから、日光浴が がん対策として非常に有効なことが示唆されますが、現代の多くの日本人にとって十分に日光浴することは難しいといえるでしょう(季節、時刻、温度、肌の露出等により効果が大きく変わるので一概に何分日光浴すれば十分だとは言い難く、またその機会を作ること自体が困難なので)。そういう状況なので、ビタミンDサプリメントを取り入れるのが現実的といえるでしょう。

 そのためにまずは、病院で血中25(OH)ビタミンD濃度を測定してもらい、正常(>30 ng/mL)、不足(21~30 ng/mL)、欠乏(<20 ng/mL)のうち、自分がどのレベルにあるのかを確認することです。そして、状況に応じて毎日1000~4000 IUのビタミンD サプリメントを摂取しましょう。血中ビタミンD濃度測定まで出来ないのであれば、毎日 2000 IU(2錠)を摂取することです。私自身は、ビタミンD(2000 IU/日)を摂り始めてから既に約6年経ちますが、先日初めてAmazonで血中ビタミンD濃度測定キットを購入して測定しました。それに関しては、投稿「血中ビタミンD濃度を測定してみた」をご覧下さい。

 では、サプリメントとしてビタミンDを摂取することの安全性をみてみましょう。ビタミンDは脂溶性ビタミンのため、過剰に摂取すると血管壁、腎臓、心筋、及び肺などに多量のカルシウムが沈着する健康障害が知られており注意が必要ですが、「1日当たり4000 IUのビタミンDを2年間経口投与した大規模なランダム化比較試験の結果、健康障害は発生しない」ことが報告されています。したがって、上述した様に毎日2000 IUのビタミンD(通常1000 IU/錠なので2錠)を摂取するのが良いでしょう(*日光を浴びる機会が多ければ1錠)。

 そして、オメガ3系脂肪酸の摂取、及び 簡単な筋力運動(スクワットや椅子からの立ち上がりなど)も併せて実施することが重要です。ちなみに、オメガ3系脂肪酸はサプリメントとして摂ることもできますし、亜麻仁油やえごま油を冷蔵庫に入れておけば、毎日簡単に摂取出来ます(注:熱に弱いのでサラダへ1日に小さじ1杯かけて食べる)。


③ ケトン食(糖質制限 + MCTオイル)、ビタミンC の組み合わせ

 ”がん” に対してケトン食が 有効であるという題名の本を見かけます。それは、「がん細胞はエネルギー産生を糖に依存していること」及び「がん細胞は酵素の欠如によりケトン体をエネルギーとして上手く使えないこと」を利用して、厳密に糖質制限を行ったケトン食により、正常細胞にダメージを与えることなく がん細胞を弱らせることが出来るという考えに基づく治療法です。

 ここでは、「がん治療」ではなく、あくまでも「がん予防」に関しての取り組みなので、「厳密に糖質制限を行ったケトン食」の必要はありません。医者や栄養士の指導なく個人の判断で安全に実施できるのは、「ぷちケトン食」です。詳細は、投稿「ケトン体質となるにはココナツオイルでなくMCTオイルが良い理由」をご覧下さい。

 また、ブドウ糖とビタミンCは分子構造がとてもよく似ているので、糖質制限下ではビタミンCが がん細胞の中に取り込まれやすく、取り込まれると過酸化水素が発生して がん細胞を破壊する(がん細胞は過酸化水素を分解する酵素カタラーゼをもっていない)という考えに基づく治療法も提案されています。

 

 上記の本では、「糖質制限」との組み合わせに「超高濃度ビタミンC点滴」が推奨されていますが、ここで目指すのは「がん治療」ではなく「がん予防」であることから、「超高濃度ビタミンC点滴」よりも安価で取組み易い「リポビタミンC摂取」を提案します。「リポビタミンC」は、日本では2015年に製品化されたこともあり、初めて聞く方も多いと思います。「リポビタミンC」は、ビタミンCをリポソーム(脂質2重膜)に覆ったことで血中で分解されにくくなり、体内でゆっくりとビタミンCが溶け出して持続性が高まる特徴があります。したがって、通常のビタミンCであれば、たくさん飲んでいるつもりでも直ぐに尿中に排泄されて、血中ビタミンC濃度は思いのほか保てていないという状態を防いでくれます。

 私が利用しているのは以下の製品です。まず、第一に他社製品に比べて非常に安価(1か月約1500円)なので継続しやすい点。また、「リポビタミンC」をはじめ合計 5種類の性状が異なるビタミンCがカプセルに含まれていて、血中濃度が維持されやすいように工夫されている点、そして、国内製造されている点が特徴です。



 「ケトン食」に先述の「ビタミンD摂取」を組み合わせることが非常に効果的であることが著されたのが以下の本です。「がん治療」に対してこれだけの効果があるのであれば、「がん予防」としては無敵と思うことでしょう。


③その他

 本ブログでこれまで取り上げた情報には、「抗炎症」、「免疫力向上」、「活性酸素の除去」などに関わるものが多いですが、これらが「がん予防」にも役立つと思われます。具体的には、「リポポリサッカライド(LPS)の摂取」で免疫力を高めること、「酪酸菌(強ミヤリサン) + 難消化デキストリンの摂取」で腸内環境を整えること、「水素吸引」で活性酸素を除去すること(直接の抗がん作用の報告もあり)で「がん予防」の効果が期待出来ます。ただし、上述②、③のように「がん予防」を主目的に実施する方策ではないと考えます。

【関連情報】

 自分が日本人集団の平均に対してどれ程の遺伝型リスク(相対リスク)を持っているか を知ることは、「がん予防」に取り組むうえで、ある程度は参考になるでしょう。私は市販の遺伝子検査キットで検査して、21種類のがんの内、4種類の “がん” において、「発症リスクが高い(リスク1.2以上)」との結果を得ましたが、これをどう解釈するかは意外と難しく感じます。詳細は、投稿「“市販の遺伝子検査” を受けてわかったメリットとデメリット」をご覧下さい。

 また、「がん予防」をしても、不幸にも “がん” に罹患することは当然起こり得ます。その時にどう行動するかを常日頃 意識しておくことが生死を分けるといっても過言ではないでしょう。是非、投稿「がんと診断された時にどう行動しますか?」もご覧下さい。