がん放置療法で知られる医師・近藤誠先生が逝去されて考えたこと



 2022年8月、「がん放置療法」で知られる医師・近藤誠先生(享年73歳)が虚血性心不全で死去されました。ここ数年の間に、本屋でも平積みされるような著名な医師の死去が続いたので、少し気になって調べてみました。

 2016年に「免疫革命」を始め、200以上の著作がある医師・安保徹 先生(享年69歳)が大動脈解離で死去されました。また、2017年には「生涯現役」として500以上の著作や講演など幅広く活動してきた医師・日野原重明 先生(享年105歳)呼吸不全で死去されました。そして、2021年に「寄生虫博士」としても有名で400以上の著作がある医師・藤田紘一郎 先生(享年81歳)が誤嚥性肺炎で死去されました。

 日野原 先生は、「生涯現役」を貫かれ、経管栄養の延命措置を拒んで自宅で亡くなられたことからも、ある意味で理想的な逝き方だと思われます。一方、日野原 先生以外のお三方が、日本人男性の死亡年齢最頻値*(88歳)よりも若くして亡くなられたことが、私の心に引っ掛かっていました(*: 令和2年簡易生命表[男]の4列目)。

 若くして亡くなられた三人に共通するのは「著作が非常に多い医師」であることぐらいで、専門も、健康に対する考え方もまちまちです。近藤誠 先生及び安保徹 先生に関して、中立的な立場(両者ともにアンチ派が多数いました)から書かれた興味深い論文(杉岡良彦, 医学哲学 医学倫理, 2007)を見つけました。両者をご存じの方もご一読頂けると理解が一層深まると思います。ちなみに、近藤誠 先生 及び 安保徹 先生は、ともに健康診断や人間ドッグの受診に否定的な立場でしたので、死因が仮にそれらを受診していれば防げたものであった場合には、アンチ派が「それ見たことか」と騒ぎ出すことを真っ先に心配しましたが、幸いにもそのような死因ではなかったことに安堵しました。

 わずか3例とはいえ、健康に関する情報を非常に精力的に発信されている医師が、思ったよりも早く亡くなられたことが気になって、「医師の寿命」がいか程かを調べてみました。岐阜県保険医協会の2008~2017年の調査において、開業医の死亡時平均年齢が70.8歳と若く、また60歳台の死亡が34%と高いことが日経メディカルで紹介されています。予想以上に短命なのに驚きました。ちなみに、ご三方は開業医ではありません。ただし、3人共に著作数からみて殆ど文筆家と変わらない生活であったことが想像されます。「締め切りに追われる」等のストレス、また長時間座っての執筆を考えると、長寿には不向きな生活だったのではないかと思われます。
 
 長生きして欲しかった諸先生方が亡くなられ、「何故?」という気持ちから、纏まりのないお話となってしまいましたが、先生方のご冥福をお祈り致します。