「市販の遺伝子検査」を受けてわかったメリットとデメリット



 遺伝子検査と言えば、女優のアンジェリーナ・ジョリーさん(当時、ブラッド・ピット氏の妻)が遺伝子検査*の結果(乳がんの発症リスクは87%、卵巣がんの発症リスクが50%)を受け、乳がん予防のために乳房切除・再建手術を受けていたことを2013年に公表して、日本でも大きな話題となったことを思い出します。彼女は、2015年には卵巣と卵管を摘出したことも公表しています(*注:病院で実施する がん に関する遺伝子検査は「市販の遺伝子検査」とは異なります)。

 日本では、2014年にジーンクエスト、DeNA等が市販の遺伝子検査キットの販売を開始し、今では数多くのメーカーが参入して1.5~4万円で販売しています。しかし、どれを選べば良いのかを見極めるのが難しい状況です。比較サイトがあるので、そちらを参考にするのも良いでしょう。

市販の遺伝子検査のメリットとデメリット

 市販の遺伝子検査キットを用いることのメリットとして、自分が将来発症する可能性のある病気のリスクが分かれば、例えばそれが生活習慣病であれば、食生活や運動などに留意して、生活習慣病の発症を抑えられる可能性が挙げられます。一方、デメリットとして、「非常に重要な個人情報」を検査会社に渡すことの不安が挙げられます。当然、各社ともに、万全の態勢で漏洩防止に取り組んでいると思いますが、もしも漏洩すれば、「生命保険」、「雇用」、及び「婚姻」等で不利益を被る可能性があります。私も遺伝子検査を受けるにあたり、プライバシーの漏洩が一番気がかりでした。

 ちなみに米国では、仮想通貨でも用いられているブロックチェーンによる「完全匿名のシーケンス」の実現に向けての取り組みも進められているようです。

実際に遺伝子検査を受けてみて

 ユーグレナ・マイヘルス(100%子会社の株式会社ジーンクエスト[上述]が解析を受託)のキットを購入し、唾液を採取して送付すると、しばらく後に解析結果をWEBのマイページで確認することが出来ます。




 解析結果は、以下の7項目から入って確認出来ます。

 

 例えば、「健康リスク」から入ると、以下の様な画面が現れます。

健康リスクの一覧

 この中の「目・耳・鼻・口(感覚器)」をクリックした結果を以下に示します。これは私の結果ですが、たいした個人情報を含まないのでご覧下さい。「目・耳・鼻・口(感覚器)」以外の項目でもそうなのですが、「細かい疾患のリスクまで知ることが出来る」といえば聞こえはよいですが、もう少し一般的な疾患に絞って結果を記載した方が分かり易いのではないかと思いました。また、「リスクが高い」はリスクが1.2倍以上、「リスクが低い」はリスクが0.8倍未満のときに表示されるようですが、私の結果では、「リスクが高い(リスク1.2以上)」が22個もあり、妻の結果でも「リスクが高い」が21個もありました。このように、「リスクが高い」の個数が多すぎるので、結果を見てから時間が経つと、何に注意すればよいのかを忘れてしまいます。リスクが1.2倍高いことで生活習慣を改善したりする動機にはならないと思われるので、「リスクが高い」と表示される閾値を、例えば1.5倍に引き上げれば(私で7個、妻で6個が「リスクが高い」と表示される)、自分がどの疾患に注意すれば良いのかを覚えていられるでしょう。

結果の一例

 「非常に強い近視」の「詳細を見る」をクリックしてみます。ここでは、2つの論文を根拠としてリスクを算出していることが分かります。「データの信頼性」が最高となる「四つ星」ですが、以下の様な基準で決定されています。他の項目(疾患)もすべて、同様の構成になっており、確認出来るデータ量は膨大です。

  • ★★★★
    当該項目に関して750人以上を対象としており独立した研究を2つ以上含む報告があるもの、または科学研究コミュニティーにおいてデータの信頼性が広く認められているもの。
  • ★★★
    当該項目に関して750人以上を対象とした試験による研究報告があるもの。
  • ★★
    当該項目に関して750人未満の小規模な試験による研究報告があるもの。

  • 当該項目に関して100人未満の極めて小規模な試験による研究報告があるもの。
  • マークなし
    当該項目に関して信頼できる研究報告が見つからず、さらなる研究・調査が必要であると考えられるもの。

 



 

まとめ

 自分の健康に関心があるのであれば、遺伝子検査を受けて得られるデータに対する満足感はかなり高いでしょう。ただし、「疾患リスクが1.5倍高い」と分かっても、予防のために生活習慣を改める動機付けには恐らくなりません。私も妻も一番高い疾患リスクが2倍台で、「疾患リスクが高い」と表示された22個(妻は21個)のうちの一つのみでした。しかし、これくらいのリスクの高さでも、生活習慣を改める動機付けにはなるかどうかは、ぎりぎりと感じます。仮に「5倍高い」となれば、何とかしなければならないと思うでしょうが・・・。したがって、費用対効果(疾患を防げるか)といった面から考えると、遺伝子検査は余り有効ではないと思います

 私が検査を受けたユーグレナ・マイヘルスから、先日、「耳のかたちに関連する【福耳(耳たぶの大きさ)】、【耳たぶの付きかた】、【立ち耳】の項目を追加いたしましたことをお知らせします。」というメールが届きました(疾患とは全く関係ありませんが・・・)。このようなアップデートのお知らせが時々届き、新たな情報が自分の遺伝子検査の結果にも反映されます。こういった新たな論文等に基づくデータのアップデートがずっと続くそうなので、私のようにそれを楽しめるのであれば、間違いなくお勧めです。