「体温を上げると健康によい」は正しいか?

 

皆が信じる「体温を上げると健康によい」という説

 「〝ヒトの体温は36.5℃〟と一般に考えられていますが、多くの現代日本人の体温はそれよりも低く、体温を上げることが出来れば身体の不調を改善出来る」という話は聞いたことがあるでしょう。本屋に行けば、そのようなタイトルの本を容易に見つけることが出来ます。私も体温がやや低い傾向があり、冷え性でもあるので体温を上げることを常に意識しています。

  

大規模調査で判明した「体温が高いと死亡率が上がる」

 一方で最近、近藤誠 医師の著書「最新 がん・部位別治療事典」の中に次のような記述を見つけました。

● 米国ハーバード大学の系列病院で、外来患者など35,400人の体温を測り、その後どうなったかを追跡したのです。結果、平熱が高いほうが、死亡率が高かった。つまり安保氏(注:安保徹 医師)らがダメだと言う「体温35℃台」が、死亡率が一番低かったのです(BMJ 2017;359: j5468)。

● 病人は〝寒がる〟とか、〝からだが冷えている〟などと言われます。しかし、それに関する研究はなく、理由は不明で、体温が下がったせいで体力が落ちるのではなく、体力が落ちた結果として体温が下がるのです。

 また、岡田正彦 医師は著書「効く健康法 効かない健康法」の中に以下のように記していることも分かりました。

●〝体を温めて免疫力を上げれば万病が予防できる〟 という健康法があります。人間の免疫力自体を測る方法がなければ、免疫力が上がったとか下がったとかは、言えないのではないでしょうか。したがって、この類の健康法には科学的根拠がなく、正しいとも間違っているともいえないのです。

 奇しくも このお二人は「がん検診を受けない」ことを公言している数少ない医師であり、私も投稿「がんと診断された時にどう行動しますか?」でそのことに関して記しています。この「あまのじゃく」 と見られがちな お二人の原点には、「科学的な根拠に基づかない通説は疑ってかかれ」という考えがあると思われます。

科学的根拠がない「体温を上げると健康によい」という通説

 そこで、「体温を上げると健康によい」に関して、科学的な根拠があるのか という観点から改めて調べてみました。この手の話題をする際に、「体温が1度上昇すれば免疫力は約5〜6倍に上がる」「体温が1度下がれば免疫力は30%も低下する」という通説が挙げられます。きっと皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか? しかし 私が知る限り、根拠となる論文が載せられているのを見たことがありません。そのような論文はあるのかもしれませんが、私はまだ見つけられていません。

 さらに、「体温が1度上昇すれば免疫力は約5〜6倍に上がる」と「体温が1度下がれば免疫力は30%も低下する」の2説は計算上 矛盾していると思いませんか? また、何度(35.5℃, 36.0℃, 36.5℃など)から1度上昇するか、1度下がるかによって結果は異なると思われます。しかも、先述のように「人間の免疫力自体を測る方法はない」となれば、そもそもデータの取りようがありません。

通説を疑うことの大切さ

 「体温を上げると健康によい」が本当か否かをここで論じるつもりはありません。ここで大切だと思うのは、このように通説となっていることでも、その根拠を簡単に探し出せないものもある という事実です。したがって、健康に関する当たり前だと思っている情報であっても絶対ではないということです