口テープとは

 「口テープ」は、1年ほど前から話題となっている健康法です。パックンも推薦しているということで、ご存じの方もいるかもしれません。方法は、夜寝ている間にサージカルテープ(2~3 cm)を上下の唇が開かないように貼り付けるといういたって簡単なものです。

 「寝ている間に口呼吸となるのを防ぐ」ことで、風邪、ドライマウス、睡眠障害(いびき、睡眠時無呼吸症候群)を防ぐだけでなく、一見、無関係と思われるアレルギー疾患(アトピー、喘息、食物アレルギー、花粉症など)や様々な全身の不調を防止する効果があるということです。慢性上咽頭炎の改善法(他項「鼻うがい(新型コロナ、慢性上咽頭炎の対策)参照)としても推奨されています。

 

 元をたどると、「口テープ」を考案したのは、医学博士 西原克成 先生と思われます。口呼吸の害をいち早く唱え、1996年には以下の本を出版しています。

 私自身は睡眠中に風邪になるのを防止するために、2010年以前からガーゼマスクを濡らして眠る健康法、通称「濡れマスク健康法」(歯学博士 臼田篤伸先生が考案)を実施していたのですが、不快であったり、外れたりしてしまい不便に思っていたところ、2~3年前にドラッグストアで「口テープ」的なものを見つけて使い始めました。「口テープ」は最初、違和感を感じるかもしれませんが、使い続けると睡眠中だけでなく起きている間も口を閉めることが当たり前になる不思議な感覚があります。 

口呼吸と鼻呼吸

 西原先生によると、睡眠中に大人の5割以上、子供の8割以上が口呼吸をしているそうです。また、アレルギー体質の人はほぼ100%が口呼吸をしているとのことです。ちなみにヒト以外の動物は口呼吸をしません。ときどき、犬が舌を出してハアハアしているのを見かけますが、あれは体温調整の時だけで基本的には鼻呼吸だそうです。つまり、ヒトを含めた動物の体は構造上、鼻は空気を取り入れる器官(呼吸器)で、口は食べ物を取り入れる器官(消化器)と役割分担がなされているのです。ヒトも乳児期には鼻呼吸ですが、言葉を話す時期になると口呼吸となる機会が生まれ、アレルギーで鼻詰まりなどの影響もあり、口呼吸に頼る習慣が身についてしまうことが多いようです。

口呼吸のデメリット

 鼻呼吸であれば、鼻から入った空気は鼻腔内の粘膜から分泌される粘液や粘膜上の繊毛により清浄化されるとともに、加温・加湿が行われます(鼻毛も一躍かっています)。一方で、口呼吸では鼻呼吸のような空気の清浄化や加温・加湿がされずにダイレクトに扁桃(喉のリンパ組織)に空気があたり、扁桃が乾燥し温度が下がるために免疫システムが低下してしまいます。したがって、新型コロナ感染予防にも鼻呼吸の方が有効と考えられます。ちなみにデルタ株ではエアロゾルが肺に届く量が多いと肺炎が重症化する可能性が高いと考えられていましたが、鼻呼吸と口呼吸のどちらでエアロゾルの肺への送達が多いかに関する報告が2022年7月にありました。それによると、予想に反して特に差は見られないということでした。

まとめ(コスト計算を含む)

 口テープは、夜寝ている間にサージカルテープ(2~3 cm)を上下の唇が開かないように貼り付けるといたって簡単なものであり、年にテープ2巻き(700円)で足りるので、コストは1日当たり約2円です。この手のテープは各種ありますが、粘着力やかぶれやすさがまちまちであり注意が必要です。下記の製品を私は最近知りましたが(通っている歯科医院で販売していました)、いままで用いていたニチバンのものよりも使いかってが大変優れたおすすめ品です。


 使ったその日から、風邪、ドライマウス、及び睡眠障害(いびき、睡眠時無呼吸症候群)の防止効果を体感でき、長期的にはアレルギー疾患(アトピー、喘息、食物アレルギー、花粉症など)や様々な全身の不調を防止出来ると思われます。

 ランキングで1位に挙げたのは、「口テープ」をしないで寝る(特に冬場の乾燥したホテルなど)のは、私自身が今では考えられないからです。冬場であれば、これをしないと一晩で風邪にかかってしまう恐怖を感じます。実際には風邪防止だけでなく、アレルギー疾患を含めた全身の不調にも効果があることも考えると、私が考える第1位です。


【参考資料】

西原克成 アレルギー体質は「口呼吸」が原因だった 青春出版社 2013年