”飲酒で顔が赤くなる人(アジアンフラッシャー)はCOVID-19に感染しづらい” は本当か?




アジアンフラッシャーはCOVID-19に感染しづらい

 今年の春以降、「飲酒で顔が赤くなる人(アジアンフラッシャー)はCOVID-19に感染しづらい」というニュースが度々、携帯のニュースサイトに載っているのを見掛けて気になっていましたが、3月には佐賀大学から論文として発表されていたことが分かりました。

 内容は、アンケート回答が得られた807名(赤くなる人:445人、赤くならない人:362人)の結果から、飲酒で顔が赤くなる人(アジアンフラッシャー)は赤くならない人に比べてCOVID-19に罹る割合は約1/5であり、その理由はアジアンフラッシャーの血中には比較的高い濃度のアルデヒド類(殺菌作用等をもつ)が存在するからではないか というものです。具体的には、アルデヒド分解酵素の遺伝子変異でアルデヒドが酢酸にまで分解されずに血中に残存し、そのアルデヒドによりCOVID-19ウイルスが弱められるからということです。 

お酒を飲まずともアジアンフラッシャーは血中のアルデヒド類の濃度が高い

 アセトアルデヒドは主にお酒(エタノール)の代謝によって生成され血中に存在します。これを知ると、「頻繁にお酒を飲んで血中アセトアルデヒド濃度を高めることがCOVID-19感染に対して有効では?」と思われるかもしれませんが、こういった幾つかの疑問に対する回答が佐賀大学から発表されています。興味深い内容が多いので是非ご覧下さい。
 
 アジアンフラッシャーの血中に比較的高い濃度のアルデヒド類が存在する理由は、単に飲酒したアルコールから出来たアセトアルデヒドが分解され難いからではなく、飲酒をしなくても体内では常に種々のアルデヒド類(毒性の強いホルムアルデヒドも微量ですが存在します)が作られており、それが分解され難いからだということです。 

 そうであれば、アジアンフラッシャーはCOVID-19だけでなく他の感染症に対しても強いのではないかと期待されますが、それは今後の研究課題だそうです。

「ファクターX」を覚えていますか?

 COVID-19対応として国境封鎖、厳しいロックダウン、大規模なPCR検査、厳格な隔離といった強硬手段がとられなかったにも関わらず、欧米に比べて日本においてCOVID-19での感染や死亡する割合が少なかった理由をiPS細胞で知られる 山中伸弥 教授は2020年に「ファクターX」と命名しましたが、その後、日本にも幾つも大きな感染の波が訪れたこともあり、忘れ去られた感があります。

 「ファクターX」というと、私には「BCG接種率」や「ネアンデルタール人の遺伝子の保持量」が思い出されます。今回の話は「ファクターX」と結びつけられた話題にはなっていませんが、そうである可能性も十分にあるでしょう。

まとめ

 お酒を飲んで直ぐに赤くなってしまうのは、特に昭和の時代、男性にとっては恥ずかしいことだったのではないでしょうか。私もそういった一人ですが、「アジアンフラッシャーはCOVID-19を含めた感染症に罹患しづらい」ことが事実だとすれば、何か報われた感があります。とはいえ、アジアンフラッシャーは飲酒関連がん(口腔がん・咽喉頭がん・食道がん・胃がん・大腸がん・肝臓がん・乳がん)に罹患するリスクが高いことが2020年に報告されています。これは、アセトアルデヒドが発がん物質でもあることによります。

 アジアンフラッシャーの存在は、「血液型により疾患のリスクに違いがあることをご存じですか?」でも述べたように、ある特定の感染症が猛威を奮ったとしても、それに対して強い個体、弱い個体がいることで、「種」として生き残る確率を高めていることの表れといえるかもしれません。そうであれば、飲酒関連がん罹患リスクと引き換えの、まさに体を張ったリスク管理といえるでしょう。