金芽米(きんめまい)とは

 最近の炊飯器には金芽米用の炊飯モードがあることからも分かるように、金芽米はかなりポピュラーな存在になりました。金芽米は2005年に精米機メーカーの東洋ライスが独自の精米技術により開発しました。30年に及ぶ試行錯誤の末に、普通の精米機ではヌカ層と一緒に取れてしまう亜糊粉層を残すことに成功したそうです。胚芽の舌触りの良くない部分を除く一方で、胚芽の基底部である金芽と栄養と旨み成分が詰まった亜糊粉層を残した、とても美味しいお米です(下図参照)。したがって、金芽米はコシヒカリやササニシキといったような「米の種類」のことではありません。


東洋ライスHPより

 プレナスグループが展開する「ほっともっと」及び「やよい軒」が2013年から金芽米を提供しているので、金芽米を購入したことがなくても知らぬ間に口にしているかもしれません。また、その美味しさから、ANAファーストクラスにおいては2017年から時限的ではありますが金芽米が提供されました。

玄米、白米と金芽米の違い

 健康に関心がある方は、マクロビオティックをご存じかもしれません。玄米を主食に、野菜、漬物、及び乾物などを副食とすることを基本とし、独自の陰陽論を元に食材や調理法のバランスを考える食事法で、がんの予防、罹患、及び再発防止に際して実施されることで知られています。これからも分かるように、玄米は炭水化物、タンパク質、脂質以外にもビタミン、ミネラル、食物繊維に富むことから、「玄米を主食とすれば一汁一菜で十分」と言われています。しかし、炊飯前に長時間(半日)の浸水が必要なこと、白米とはかなり食感が異なること、及び消化に良くないこと等のデメリットがあり、白米から玄米食に切り替えるのはそう簡単ではありません。

 ところで、金芽米はヌカ層が取り除かれている分、玄米と比較して栄養価は少し劣りますが(ただし、玄米は100回噛まないと栄養を吸収出来ないとも言われているので、噛む回数によっては優劣は逆転します)、玄米のデメリット(上述)が改善され、白米に比べても美味しく(旨み成分が2割増し)、さらにビタミンB1は白米の約7倍、オリゴ糖は約12倍、リポポリサッカライド(LPS)は約6倍、食物繊維は約1.8倍(下図参照)と健康面からみて非常に優れています。

東洋ライスHPより

 また、金芽米は亜糊粉層が水分を吸収して、ごはんの一粒一粒がふっくらと膨らむことから、少ないお米で白米と同量のお米が炊けるので、白米と同じ量を食べた場合にカロリー17%の削減が可能です。医師 奥田昌子先生によれば(下記の【参考資料】参照 )、いつも食べているご飯を少し減らすだけでも内臓脂肪を劇的に減らせるということです。しかし、この「少し減らす」ことが意外と難しいのですが、白米から金芽米に変更するだけで「少し減らす」のと同様の効果が期待出来ます。白米から金芽米への変更により、お茶碗1杯(白米250 kcal、金芽米208 kcal)当たり42 kcalの削減が可能なので、朝晩2食を変更をすれば1日で84 kcalの削減が可能です。したがって、1年間では84 kcal x 365(日)= 30660 kcalの削減となります。「腹囲 1 cm = 内臓脂肪1 kg = 7000 kcal」に当てはめると、30660/7000 = 4.4、なんと1年間で約4.4 kgの内臓脂肪(腹囲 約4.4 cm)を減らすことが可能という計算になります。にわかには信じられない値ですが、内臓脂肪が気になる人にとって、非常に魅力的なことに間違いないでしょう。

 

胚芽米、分づき米と金芽米の違い

 金芽米が気になる方であれば、「胚芽米」や「分づき米」との違いも気になるのではないでしょうか。「分づき米」は、あまりポピュラーではありませんが、「一分づき」~「九分づき」までの分類があって、数字が小さい方が玄米に近くなります。逆に、数字が高いほど、白米に近くなります。ちなみに、「胚芽米」は、「七分づき」と「八分づき」の間の精米方法で、舌触りが良くない胚芽が残され、また食味を低下させるヌカ層も若干残っているお米です。

 一方、金芽米は、先述したように東洋ライスの独自の精米によるお米で、栄養のある「胚芽の基底部」と「亜糊粉層」が残されており(ヌカ層は除去されています)、敢えて分づき米の分類に当てはめると「八分づき」相当となります。繰り返しになりますが、食味を低下させるヌカ層がなく、栄養のある「胚芽の基底部」と栄養と旨みが詰まった「亜糊粉層」が残されている点が金芽米の特徴です。

金芽米の効能(メリット)

 先述したように、白米と同量を食べた場合にカロリーが17%削減されるので、朝晩2食を金芽米に変更をすれば、1年間に約4.4 kgの内臓脂肪(腹囲 約4.4 cm)を減らすことが可能という計算になります。また、東洋ライス株式会社、東京農業大学、及び同志社大学の共同研究の成果として、「金芽米」又は「金芽ロウカット玄米」を1年間常食することで、公的医療費が約60%減少したことを示す実証結果が2021年に報告されました。

金芽米を炊くときの注意点

 金芽米を炊くときに、下記①~③に留意して下さい。そうしないと、金芽米のメリットを享受出来ません。
① お米に付属の軽量カップ(通常より少なめに計測)でお米を測ること
② お米を研がないこと

 ①は、上述した「少ないお米で白米と同量のお米が炊ける」ことが理由です。②は、金芽米は無洗米であること、また激しく洗うと栄養と旨み成分が詰まった亜糊粉層が取れてしまうことが理由です。なお、浸水時間は白米と同じで構いません(理想的には、夏場30分、冬場60分)。

まとめ(コスト計算を含む)

 金芽米の開発は2005年と意外と古いにもかかわらず、なかなか世の中に浸透しないと感じていましたが、「ほっともっと」及び「やよい軒」が、2013年から白米を金芽米に切り替えているのは意外でした。私自身は、2015年頃から金芽米を購入していますが、今回の記事を纏めるまでは栄養面ばかり考えていて、「金芽米」の美味しさに関しては無頓着でした。最近は、「金芽ロウカット玄米」を購入することも多く、たまに白米を食べると、つややかで美味しいなと思ったりもしていたのですが、「金芽ロウカット玄米」はヌカ層が残っているので美味しさ的には期待できないことを今回学びました。これを機に購入するなら「金芽米」として、その美味しさを味わいたいと思います。

 コスト的には同じ産地の白米と比べると割高ですが、サプリメントを減らしても金芽米を主食とする価値はあるのではないかと考えます。先述したように、「金芽米」は精米法による呼び名なので、好きなお米の種類(例えば、「こしひかり」)の金芽米を選ぶことが可能です。

【参考資料】

・東洋ライスHP
・マクロビオティック Wikipedia
・奥田昌子 内臓脂肪を最速で落とす 幻冬舎新書
・奇跡の発明。「金芽米」「無洗米」を生み出したコメ業界のエジソン MAG2NEWS
・牧田善二 医者が教える食事術 実践バイブル2
・無農薬米・減農薬米専門のお米や はちぼく屋HP