
健康に関心のある方や本屋をよく訪れる方はご存じだと思いますが、「四毒抜きのすすめ」が昨年話題になり、現在も大きなムーブメントとなっています。歯科医師でYouTubeでもおなじみの吉野敏明氏が提唱する説で、戦後にアメリカから過剰に入って来た小麦、植物油、乳製品、甘いもの を摂らない(日本の昔ながらの食生活をする)ことで、多くの身体の不調を改善できるというものです。
この本を読むと、私にも「納得できる部分」と「これまでの常識と異なる部分」があることが非常に気になり、著名な医師* が「四毒抜き」をどのように考えているのかを知りたいと思いました。
*医師といえば通常、「お医者さん(医師免許取得)」を指しますが、吉野敏明氏が歯科医師(歯科医師免許取得)なこともあり、以下のYouTubeでは歯科医師作成のものも取り上げました。
「四毒抜き」に関する13人の医師のYouTube動画を視聴回数の多い順に見た
YouTube番組をもっている医師には「四毒抜き」に関する質問が多いためか、「四毒抜き」に関する動画を作成している方が多い印象です。しかし、「四毒抜き」とは一定の距離を取りたいと考える医師がいるのも確かなようで、私が意見を聞いてみたいと思っている医師の中には「四毒抜き」を取り上げない方もいます。このように「四毒抜き」は科学的に論じるだけでは済まないフェーズに入っているともいえるでしょう。
「四毒抜き」に関して医師が作成している動画を見て、全体としてどのようなことを述べているか(総論)、そして各四毒に関する意見(各論)を以下にまとめました。
【判定基準】
〇: 積極的に賛成・推奨
△: 条件付き賛成(体質による、適量ならOKなど)
✕: 反対・または異なる見解(むしろ摂取すべきなど)
① 100万回視聴 高須幹弥(美容外科医)
総論:どれも摂り過ぎはよくない。個人差が大きいのでひとまとめにするのは困難
各論
・小麦△:体質的に問題が無ければ摂ってOK
・植物油✕:えごま油、アマニ油(オメガ3)、オリーブ油(オメガ9)はむしろ推奨
・乳製品△:加工乳製品(ヨーグルト、チーズなど)は摂ってOK
・甘いもの△:黒砂糖、蜂蜜は適量摂ってOK
② 27万回視聴 佐藤青児(歯科医)
総論:考え方は悪くない。実際に救われる人も多いだろう。重篤なアレルギーなどに対する治療法に近い健康法。健康な人にそのまま当てはめるのは疑問
各論
・小麦〇:ほぼ賛成
・植物油△:植物油だけでなく動物油も控えるべき
・乳製品△:たまに摂ってOK
・甘いもの△:果物は摂ってOK
③ 24万回視聴 石原結實(内科医)
総論:自分でやってみて調子が良ければやればよい
各論
・小麦〇:日本人には米のほうが合っている
・植物油△:酸化したものが悪いだけで、新鮮なオリーブオイルは摂ってOK
・乳製品△:加工乳製品(ヨーグルト、チーズなど)は摂ってOK
・甘いもの△:白砂糖はだめだが、少量は薬にもなる。黒砂糖は摂ってOK
④ 19万回視聴 北條元治(形成外科医)
総論:これらはそもそも「毒」ではない。医師であれば「毒」を科学的に扱うべき
各論
・小麦△:体質的に問題が無ければ摂ってOK
・植物油△:避けようがない
・乳製品△:ホルモンバランスや免疫への影響は確かにあるが、それは乳製品に限らない
・甘いもの△:悪い影響はあるが、まだ説のものもある
⑤ 17万回視聴 内海聡(内科医)
総論:6~7割は同意。ただし、現在健康な人にとってはストレスとなる。人は健康のために生きているわけではない
各論
・小麦△:小麦の代わりの米が良いわけではない(糖、ゲノム編集の観点から)
・植物油✕:油の本も出している油マニアの観点からすれば、必要な植物油もある
・乳製品〇:賛成
・甘いもの〇:賛成(4つの中で一番悪い)
⑥ 13万回視聴 矢作直樹(救急科専門医)
総論:医者は病人が相手なので健康な大多数に当てはまるわけではない
各論
・なし(四毒の一つ一つに関する説明はほとんどない)
⑦ 12万回視聴 下川穣(歯科医)
総論:8割賛成だが、自己流に解釈してしまうと怖い面もある
各論
・小麦△:体質的に問題が無ければ摂ってOK。全粒粉は健康に寄与するデータが出ている
・植物油△:動物油は腸内環境を乱すので注意。えごま油、オリーブ油などは摂ってOK
・乳製品〇:ほぼ賛成
・甘いもの〇:100%賛成
⑧ 6.7万回視聴 石黒成治(外科医)
総論:本当かどうかは自分で確かめるべき。情報に振り回されるな
各論
・小麦△:体質的に問題が無ければ、血糖値コントロールが出来る範囲で摂ってOK
・植物油〇:痛んだ油はよくないので外食を避ける(まずは半分に減らす)
・甘いもの✕:血糖値コントロールが出来る範囲で摂ってOK
⑨ 6.2万回視聴 山下あきこ(内科医)
総論:概ね賛成
各論
・小麦〇:ほぼ賛成
・植物油△:植物油の中には良いもの(ココナツオイルなどもある)もある
・乳製品〇:ほぼ賛成
・甘いもの〇:ほぼ賛成
⑩ 4.9万回視聴 石原新菜(内科医)
総論:和食をとれば、自ずと4毒は摂らなくなる。ストイックにならず、外食も時には楽しむ。自分の体の声を聞いて、調子が良いスタイルを見つけることが大事
各論
・なし(四毒の一つ一つに関する説明はない)
⑪ 3.7万回視聴 和田秀樹(精神科医)x 木村 盛世(公衆衛生医)
総論:齢をとると栄養が足りないことが問題となる。雑食的にいろいろ摂るのがアンチエイジングの基本。「健康不安」を利用してビジネスとするのはいかがなものか
各論
・小麦△:体質的に問題が無ければ適量は摂ってOK
・植物油△:オリーブオイルは摂ってOK
・乳製品✕:アンチエイジングの立場からみれば、むしろ足りない
・甘いもの△:認知症患者には効果的
⑫ 3.5万回視聴 飯塚浩(精神科医)
総論:精神科医の立場から、良いものを食べるのではなく、悪いものを食べない重要性には以前から気づいており、非常に賛同する
各論
なし(四毒以外にも悪いものはあるが、これらが中核であることに異論はない。個別に関しては、他の動画にまとめているのでそちらで確認可能)
⑬ 2.1万回視聴 押川勝太郎(がん治療医)
総論:6つのAIに四毒について質問したところ、「事実も含まれるが、科学的根拠が薄くデマに近いものもある」とすべてのAIが回答
各論
・小麦△:体質的に問題が無ければ摂ってOK
・植物油△:オメガ3やオリーブオイルは良質な油で摂ってOK
・乳製品△:体質的に問題が無ければ摂ってOK。タンパク質、カルシウムの良い補給源となる
・甘いもの△:適量は摂ってOK
13人の医師の動画を見てわかったこと
一目で確認できるように、表にまとめました。
| 医師名(専門) | 総論(賛成度) | 小麦 | 植物油 | 乳製品 | 甘いもの | 特筆すべき見解・スタンス |
| 高須幹弥 (美容) | △ | △ | ✕ | △ | △ | 個体差を重視。一律の禁止に否定的 |
| 佐藤青児 (歯科) | 〇 | 〇 | △ | △ | △ | アレルギー治療としては有効 |
| 石原結實 (内科) | 〇 | 〇 | △ | △ | △ | 日本人には米と和食が合うという立場 |
| 北條元治 (形成) | △ | △ | △ | △ | △ | 「毒」という言葉の扱いに慎重 |
| 内海聡 (内科) | 〇 | △ | ✕ | 〇 | 〇 | 精神的ストレスとのバランスを考慮 |
| 矢作直樹 (救急) | △ | – | – | – | – | 健康な大多数への適用には慎重 |
| 下川穣 (歯科) | 〇 | △ | △ | 〇 | 〇 | 腸内環境の観点から概ね賛成 |
| 石黒成治 (外科) | 〇 | △ | 〇 | – | ✕ | 自分で試して検証することを推奨 |
| 山下あきこ (内科) | 〇 | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 予防医学の観点から概ね肯定 |
| 石原新菜 (内科) | 〇 | – | – | – | – | 「和食中心」にすれば自然と抜ける |
| 和田・木村 (老健) | ✕ | △ | △ | ✕ | △ | 高齢者は栄養不足(フレイル)を懸念 |
| 飯塚浩 (精神) | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | メンタルヘルス改善に有効と断言 |
| 押川勝太郎 (がん) | ✕ | △ | △ | △ | △ | AIを利用して科学的根拠の薄さを指摘 |
※「-」は動画内での個別言及が少なかったもの
1. 「油」は毒か、薬か?(最大の争点)
吉野氏は全ての植物油を否定していますが、多くの医師は「オメガ3(えごま油、アマニ油)」や「オメガ9(オリーブオイル)」はむしろ積極的に摂るべきという立場です。
- 賛成派: 酸化した油や加工された油(トランス脂肪酸など)の害を重視
- 慎重・反対派: 良い油まで抜くと、細胞膜の質や脳機能に悪影響が出ると懸念
2. 「乳製品」の必要性(年齢・目的による違い)
乳製品についても、「日本人の体質(乳糖不耐症)に合わない」とする意見と、「高齢者の貴重なタンパク質・カルシウム源」とする意見で割れています。
- 賛成派: 腸内環境やホルモンバランスへの影響を重視
- 慎重・反対派: 特にアンチエイジングや骨粗鬆症予防の観点から、代替品なしの除去を危惧
3. 「誰が」やるべきか?(病人か、健康な人か)
これが最も重要な視点かもしれません。
- 「病人・不調がある人」の場合: 多くの医師が「劇的な改善が期待できる」と認めています
- 「健康な人」の場合: 「そこまでストイックにする必要があるのか?」「ストレスの方が害ではないか?」という懐疑的な意見が目立ちます
このように、全面的に賛同しているのは飯塚医師だけで、他の多くの医師は何らかの異論を持っている点は注目に値します。
それでは何故ここまで「四毒抜き」が話題となるのか?
四毒抜きのために「家の中から植物油、白砂糖を捨て、買い物では小麦粉を含んだ製品や乳製品を買わず、外食もしない」と聞くと、自分には出来ないと思う可能性が高いのですが、「昔ながらの和食をするだけ」と聞くと、一気にそのハードルが下がります。しかも、高い有機野菜に切り替える必要もなく、金銭的な負担がないばかりか、むしろ食費は下がるでしょう。
さらに、従来の「断食」や「糖質制限」が特定の要素を制限するのと比べ、「四毒抜き」はより多角的なアプローチであるためか、改善を実感する不調の幅も広いようです。実際、動画のコメント欄を覗くと、国民病ともいえる「花粉症」の症状が和らいだという声も驚くほど多く、大きな関心を集めている理由がうかがえます。このように、「理論」を説く本だけでは伝わりにくい「実践者の生の声」をリアルタイムで感じられる動画の存在が、このムーブメントを加速させている大きな要因といえるでしょう。
「四毒抜き」には注意が必要
「四毒抜き」に限らず、「断食」や「糖質制限」といった新しい健康法が普及する初期段階では、必ずといっていいほど「自己流の極端な解釈」で体調を崩してしまうリスクが伴います。現在、SNS上に「四毒抜き」を実践するコミュニティが数多く存在します。しかし、そこでは一部で「いかに厳格にやっているか」を競うような「ストイック自慢」が見受けられるようです。実践が甘いと非難を浴びたり、完璧主義に陥って精神的に追い詰められたりするケースも少なくないようです。心配な方は是非 下記の書籍を読んでみてください。
今でこそ「断食」や「糖質制限」には、「プチ断食」「プチ糖質制限」といった、心身に負担をかけすぎない「ほどほど」の付き合い方が定着し、その有効性も確認されています。しかし、「四毒抜き」を提唱する吉野氏が四毒を完全に避けることを推奨していることもあり、まだそうした「ゆるい選択肢」が広まる気配はありません。ストイックになりすぎて、健康のために始めたことで心や体を壊しては本末転倒です。この「過渡期特有の熱狂」には、特に注意が必要だと言えるでしょう。
まとめ
本ブログでも触れた「断食」や「糖質制限」は、これまでに多種多様な実践法が提案され、膨大な情報の蓄積が進んできました。現在では、これらを全否定するのではなく、健康維持や治療の「有力な選択肢の一つ」として捉える医師が一般的になっています。一方で、現在大きな注目を集めている「四毒抜き」が、今後医学界でどのような位置付けを確立していくのかは非常に興味深いところです。
13人の医師たちの見解が物語るように、「四毒抜き」もまた、絶対的な正解ではなく一つの健康概念です。大切なのは、流行に振り回されすぎず、「断食」や「糖質制限」と同じように自分の体質や体調の変化をよく観察しながら、賢く自分に合った形を取り入れていくことだと思います。
以下の投稿もご参照いただければ幸いです。
・投稿「30冊以上の『断食』に関する本で分かったメリットとデメリット」
・投稿「20冊近くの『糖質制限』に関する本で分かったメリットとデメリット」

